ページ

2012/01/20

「冷やされた湯気が水滴として落ちているだけではなく、核燃料の冷却のために原子炉に注いでいる水が、損傷した部分から漏れ出て、構造物を伝って落下しているのではないか」

福島第一2号機 格納容器内を初撮影
2012年1月20日 07時07分




 東京電力は十九日、福島第一原発2号機の格納容器の貫通部から工業用内視鏡を内部に入れ、その画像を公開した。廃炉に向け、原発の状況を正確に把握するための重要な一歩。事故後に格納容器内を撮影したのは1~3号機で初めて。

 映像は放射線の影響でノイズが多く鮮明ではなかったが、写っている範囲では、配管や格納容器の内壁に大きな損傷はないとしている。

 格納容器の底から四・五メートルの位置まで内視鏡を下ろしたが、水面は確認されなかった。炉心に注入した水は、これより低い位置で建屋地下に流れ出ていることが確認された。

 先端に取りつけられた温度計で内部の温度も測定し、四四・七度で、近くの温度計との誤差は二度程度だった。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「温度計の温度との誤差がさほどなかったと確認できたのは大きな成果」と強調。

 ただ、冷却水から立ち上る湯気や、画像を乱すほどの放射線の様子に、松本氏は「格納容器内部はまだ厳しい状態だということも確認できた」と話した。

 東京電力が公開した福島第一原発2号機の原子炉格納容器内部の画像は、大量の放射線による斑点や水蒸気のため不鮮明なものが多く、焦点となっている溶け落ちた燃料の状態は不明のまま。今後の事故処理の難しさをうかがわせるものだ。

 公開された画像は七枚で、約三十分間の映像から抜き出した。

 宮崎慶次大阪大名誉教授(原子力工学)は「この画像だけでは格納容器や原子炉圧力容器の損傷は見受けられない。圧力容器や格納容器の底部付近は、壊れていたり、溶けた燃料がたまっていたりする可能性があり、そこを見る必要がある」と話す。ただ「格納容器の底に燃料がたまっていれば放射線量が高く、近くから内視鏡を挿入するのは危険で、相当の工夫が必要だ」と指摘した。

 東電は「今日の撮影は最初の一歩。燃料にたどり着くには新たな技術開発が必要で時間がかかる」としている。

(東京新聞)





専門家“格納容器健全性評価を”
1月20日 19時27分
東京電力福島第一原子力発電所で、メルトダウンを起こした2号機の格納容器の内部を、内視鏡で撮影した動画が初めて公開されました。動画を見た、原子炉プラントに詳しい法政大学の宮野廣客員教授は、「配管などの構造物に目立った損傷は見られないが、格納容器の鉄製の内壁が赤くさびて、腐食が進んでいるので、今後、燃料の取り出しなど、廃炉に伴う長い作業に向けて、格納容器の健全性を評価しておく必要がある」と述べました。そのうえで、「配管に付着しているさびは、原子炉内から出た高い線量の放射性物質が含まれているので、将来的に除染が課題になるだろう」と指摘しています。

また、格納容器の内部で水滴が雨のように落下しているとみられることについて、「冷やされた湯気が水滴として落ちているだけではなく、核燃料の冷却のために原子炉に注いでいる水が、損傷した部分から漏れ出て、構造物を伝って落下しているのではないか」と分析しています。一方、格納容器の中にたまっている汚染水の水面の高さが確認できなかったことについて、「内部の温度が45度前後とそれほど高くないことから、核燃料は水をかぶって冷やされていると推測できる。今後、内視鏡を長くするなど改良して、水面の高さを確認することで、燃料の状態や水が漏れている部分を特定する必要がある」と指摘しています。