福島第一原発の4号機で、「使用済み燃料プール」の燃料がほとんど損傷していないことがわかりました。当初、プールが「空だき」になり「水素爆発」が起きた、と考えられていましたが、これを打ち消すもので、なぜ、爆発が起きたのかわからないという事態に陥っています。
JNNが入手した4号機の写真。爆発で壁は大きく崩れています。
「4号炉については現在、火災が生じています」(枝野官房長官〔3月15日〕)
一時は「最も深刻」とまで言われた4号機。当初、プールが「空だき」になって燃料が損傷し、「水素爆発」が起きた、と考えられていました。
しかし・・・。
「『空だき』の状態まではいっていなかったと考えている」(東京電力の会見〔5月9日〕)
東京電力が水中の放射性物質の濃度などを調べたところ、燃料に目立った損傷は見られないことがわかったのです。予想されていた「水素爆発」のシナリオは否定されことになります。
では、爆発は、なぜ起きたのか・・・?
「水素爆発なのか、あるいはその他の要因も含め調査中です」(東京電力の会見〔10日午前〕)
政府関係者によると、4号機と3号機のタービン建屋はつながっていることから、3号機で発生した水素が何らかのルートで4号機に流れ込んだ可能性も考えられるといいます。
「例えば水素が何らかの形で回ってきたと推測できるが、(3号機からとの)確証はなかなか得られていない・・・」(原子力安全・保安院〔10日午前〕)
謎の爆発。何が起きたか、分からないままでは、復旧作業にも影響が出ることは避けられません。(10日16:34)
謎深まる4号機爆発 水素、原因じゃない?
2011年5月10日 夕刊
燃料が損傷し水素が発生したと考えられてきたが、水中カメラで調べても燃料に損傷は見あたらない。地下で接する3号機から水素が流入した説も出てきたが、説得力に欠ける。専門家の間でも「原因は分からないかも」との声が出始めた。
大震災当時、定期検査中で、炉内の燃料は全てプールに移されていた4号機。1~3号機の対応に追われ、忘れられがちだったが、三月十六日撮影の衛星写真で大破していたことが分かった。
柱を残しほとんど壁が吹き飛んでいることから、東京電力は水素爆発が起きたと判断。計千五百三十五体の燃料を保管していることから、注水冷却に追われることになった。
だが、四月二十八日と今月七日にプール内を水中撮影すると、がれきなどは入っているが、いずれも予想以上にきれいな状態。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は八日、「燃料は比較的健全と思っている」と述べた。燃料が無事なのはいいことだが、大破の原因究明は振り出しに戻った。
次に浮上したのが、隣の3号機から水素が流れ込んで爆発したとの説。先に3号機は大爆発を起こし建屋は無残な姿になっており、水素が発生したのは明らか。3、4号機は地下の配管などでつながっているため、流入説が出た。ただ、経済産業省原子力安全・保安院の担当者は「空気より軽い水素が下に回り込むものなのか疑問がある」と否定的だ。
水素以外の爆発説もある。点検時に持ち込まれた有機溶剤などが原因という。ただ、持ち込み量は「地震前日の作業終了時で石油類二・六リットルとスプレー缶三十三本」(東電)。民間シンクタンクの原子力コンサルタント佐藤暁氏は「壁一枚飛ばすどころか、人がやけどする程度でしかない」という。
テレビカメラで爆発が撮影された1、3号機と違い、4号機は爆発の目撃者もいない。原子力安全委員会の関係者は「どの仮説も検討するとあり得ないという結論になる。いつ壊れたかすら特定できていない」と途方に暮れる。
福島第一原発4号機 使用済み核燃料一時貯蔵プール
核燃料損傷見られず…4号機一時貯蔵プール
東京電力は8日、福島第一原発4号機の使用済み核燃料一時貯蔵プールの水中を撮影した映像を公開した。
使用済み核燃料が収納されているラックの上に、がれきや、はしごが落ちている様子が映っているが、核燃料に目立った損傷は見られないという。
7日午前11時頃、プール注水用の生コン圧送機のアームの先につけたカメラを水中に入れて撮影した。4号機プールの水中撮影は4月28日に続き2回目。プール内には熱を帯びた使用済み核燃料があり、水温が80~90度と高いため、気泡も確認できる。
また、1号機の原子炉建屋の放射性物質の濃度を低減するため、原子炉建屋につながるタービン建屋1階の廊下に設置された換気装置の映像も公開された。作業員が6日に撮影した。
(2011年5月9日12時35分 読売新聞)