核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が起きた福島第一原発1号機で、原子炉建屋の地下の半分程度が水につかっているのが確認されました。格納容器などから漏れた汚染水とみられます。
東京電力:「まだ、放射性物質の測定は行われていないが、高線量の水だとすると処理を進めていく必要がある」
13日午前、作業員が原子炉建屋の地下に降りる階段から懐中電灯で確認したところ、西から東に向かって水が流れているのを発見しました。深さは4メートル以上で水の量は地下のスペースの約半分の3000トン程度だということです。東京電力は、格納容器やその下の圧力抑制プールから漏れた汚染水とみて、処理方法を検討しています。
一方、1階南東側の二重扉近くではこれまでで最も高い毎時2000ミリシーベルトの放射線量が計測されました。作業員の被ばく線量の上限を8分で超える高い値です。溶けた燃料がたまった原子炉の底につながる配管がある場所で、高い濃度の汚染水が流れ込んだ可能性があるということです。
撮影:東京電力
福島1号機の建屋地下に大量汚染水 格納容器から3千トン?
2011年5月15日 02時10分
東京電力は14日、福島第1原発1号機の原子炉建屋地下に大量の水がたまっているのを確認したと発表した。格納容器から漏れた高濃度の放射能汚染水の可能性が高く、東電は今後、回収や浄化を検討する。
たまり水は13日午前、建屋に入った東電社員2人が1階北西側の階段から下をのぞいて見つけた。高さ約11メートルある地下階の中ほどまで水が来ていたといい、3千トン程度に達する可能性がある。放射線量は階段下り口付近で毎時79ミリシーベルト。水面近くは不明。2人は30分の作業で約3ミリシーベルト被ばくした。
地下階には約6千トンの水が入る計算。格納容器の一部の「圧力抑制室」があり、東電はここから漏れた可能性が高いとみている。今後、放射性物質の濃度などを調べる。松本純一原子力・立地本部長代理は「水量がさらに増える場合は浄化して冷却水に使うことも検討する」と述べた。
また、東電は14日、1号機原子炉建屋1階の線量地図を公表。南東角の入り口近くの線量は最高毎時2000ミリシーベルトで、被災以降に計測された中で最も高い値だった。ここには炉心と配管でつながる計測装置があり、配管が損傷したため高線量になったらしい。損傷原因は明らかにされていない。当面の復旧作業で近づく予定はない。
このほかでも炉心とつながる配管などでは毎時100ミリシーベルト以上の放射線量を記録した。また、建屋北東の入り口付近では最高毎時93ミリシーベルト。冷却システムの設置が予定されている建屋南西の「大物搬入口」近くの建屋内は毎時55ミリシーベルトだった。
(中日新聞)
1号機地下に大量の汚染水か 福島第1、炉心から漏れた可能性
経済産業省原子力安全・保安院は14日、福島第1原発1号機の原子炉建屋地下に、深さ4メートル超とみられる大量の水がたまっているのが見つかったと発表した。高い放射線量の汚染水の恐れがあり、東京電力によると最大で3千トン程度に達する可能性がある。
1号機は、燃料溶融で原子炉圧力容器に穴が開いて炉心への注水が漏れているとみられる。東電はこれが格納容器やその一部の圧力抑制プールから、配管の貫通部などを通じて流れ出た可能性が高いとして、流出経路や放射線量などを調べる。
一方、原子炉建屋1階では、遠隔操作のロボットによる測定で、放射線量がこれまでで最も高い毎時2千ミリシーベルトの場所を確認。東電はこうした状況を踏まえた工程表の改定版を17日に出す予定だが、格納容器を水で満たして燃料を冷やす作業への影響は避けられそうにない。
地下の水は、東電の13日の調査中に作業員が確認。1階から降りる階段の途中で見ると、圧力抑制プールを収めた地下の空間で、西側から東側への水の流れがあったという。地下でも場所によって水がたまっていない可能性があるとしている。
1号機では格納容器から引き出した水を循環させて冷やし、原子炉に戻す新たな冷却システムをつくる予定だが、東電は、格納容器からではなく地下のたまり水を直接吸い上げて、循環させる検討も始めた。ただメルトダウン(全炉心溶融)が起きたとみられる炉心からの水なら、高線量のため処理が必要になる。
1階の線量が高かった場所の近くには、原子炉につながる配管があり、中に高線量の水が入っている可能性がある。建屋内にはほかにも高線量の場所があり、冷却システム構築に向けた作業の妨げになる恐れがある。
また東電は2、3号機の圧力容器も、メルトダウンが起きた1号機と同様に想定より水位が低い可能性を認め、「最悪の場合は同様の(メルトダウンの)ケースが想定されるが、現時点ではどこまで損傷が進んでいるかはまだよく分かっていない」と説明した。
2011/05/14 23:44 【共同通信】
東日本大震災:福島第1原発事故 1号機汚染水、納容器から漏出か
◇核燃料、炉心溶融で穴
東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋地下1階で14日、行方が分からなくなっていた冷却水が大量に見つかった。1号機では燃料が炉心溶融し、圧力容器、格納容器とも穴が開いていると見られており、東電は同日の記者会見で「格納容器やその下部の圧力抑制プールから漏れた水がたまっているのではないか」と推測した。
東電によると、建屋地下のたまり水は東電社員が13日に1階北西側の階段を下りた際に確認した。水は地下1階部分(高さ11メートル)の半分程度に達していることから、推計で3000立方メートル程度あるとみられる。
放射線量などは不明だが、直近の階段上部で毎時72ミリシーベルトあった。地下1階部分には格納容器の下部や、格納容器につながる圧力抑制プールがある。
1号機炉心へはこれまでに1万立方メートルの水を注入したが、このうち5000立方メートル程度の行方が分からなくなっていた。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「水の所在が分かったという意味では前進。高線量ならたまり水の処理を早急に進める必要があるが、現在進めている冷却装置の設置作業を見直す段階ではない」と述べた。
一方、東電は14日、1号機の原子炉建屋外に設置する冷却装置の搬入作業を公開した。装置は長さ2・3メートル、幅3・6メートル、高さ4メートルで重量は2100キロ。空冷方式で、格納容器内にたまった水を内部で循環させ、その間にファンで水の熱を除去する仕組み。
建屋内にある冷却装置の復旧に時間がかかるため、当面は仮設の冷却装置でしのぐ方針。17日までに計10基導入する予定で、現在は2基の設置作業を進めている。ただ、冷却稼働には、格納容器内の水が配管の位置まで達している必要がある。1号機では格納容器から水が漏れている可能性があるため、東電は水位の確認作業も急いでいる。【中西拓司、八田浩輔】
毎日新聞 2011年5月15日 東京朝刊