文部科学省は7日、通常より高い放射線量が検出されている県内の学校の校庭などで、表土を下層の土と入れ替えて線量を低減させる「上下置換工法」の実地検証を行うと発表した。有効性が確認でき次第、同工法の導入を県内自治体に提言する。
郡山市などが校庭・園庭の表土を除去し、土を校庭に仮置きしている中で、同省は「土を敷地外に運ばない工法は現実的な手段」としている。ただ、放射性物質を含む土が現場に残ることや費用の問題などを不安視する声も上がっている。
検証は8日に行う。同省の4月の調査で屋外活動制限基準(毎時3・8マイクロシーベルト)を上回った福島市の福島大付属中と同大付属幼稚園の校庭で実施する。表面から5センチ~20センチ程度の土と、その下層の土と入れ替える。校庭・園庭のそれぞれ数地点で10メートル四方の範囲で、土の厚さを変えて検証する。結果は数日中に発表する。
同省によると、同工法はチェルノブイリ原発事故の土壌改良でも採用されたという。上下の土を入れ替えることで遮蔽(しゃへい)効果があるとされる。放射線研究機関「日本アイソトープ協会」の研究報告では40センチの置換で9割減、60センチの置換で100分の1に低減されたという。
これまで文科省は、活動制限基準を示したが、放射線量を低減するための対処法を示していないため、県内の関係自治体が対策を要望していた。同省は「選択肢として参考にしてほしい」と説明している。
しかし、学校関係者などによると、表土が現場に残ることに保護者から不安の声が上がることが懸念されるという。大雨や屋外活動で土が削れて下層の土が露出する可能性を指摘する声もある。
また、工事費用の負担について同省は「検討する」としているが、現段階では不透明な状況だ。自治体の支出となれば、大きな負担になるとみられる。
郡山市などは4月下旬から独自に校庭・園庭で表土を除去、シートをかぶせて仮置きしているが、国は処理方法を示しておらず、依然、宙に浮いたままになっている。
(2011/05/08 09:47)
福島 校庭の放射線量低下へ実験
5月8日 12時16分
原発事故の影響を受けて、福島県内の一部の学校では、校庭の放射線量が目安の値を超え、今も屋外での活動が制限されるなか、文部科学省などは、校庭の表面の土を下のほうの土と入れ替えることで放射線量を下げることができるかどうか確かめる実験を行いました。
この実験は、文部科学省と日本原子力研究開発機構が、福島市の福島大学附属中学校と幼稚園で行ったものです。
実験では、放射性物質が付着している可能性がある校庭の表面の土を80センチ四方にわたり、はぎ取るように取り除いたあと、その下のほうにある土と入れ替え、表面の放射線量が下がるかどうか測定を行います。
福島県内では先月、合わせて13の小中学校などの校庭で、目安の値を超える放射線量が測定され、一部の学校では、今も屋外での活動を制限しています。また、郡山市の一部の学校では、放射線量を下げるために取り除いた校庭の土を巡って、処分の基準がないため、ほかの場所に移せない状態が続いています。
実験を行った日本原子力研究開発機構の戸谷一夫理事は「この方法は、放射性物質が付着した可能性のある土を校外に持ち出さなくて済むメリットがあり、どれだけ効果があるのか確かめたい」と話していました。文部科学省は、8日の実験結果を詳しく分析したうえで、校庭の土をどう処理するのが適切なのか判断することにしています。