福島第1原発:岡田幹事長、20キロ圏内を視察
民主党の岡田克也幹事長は8日、立ち入り禁止となっている福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域内を視察した。4月22日の警戒区域指定以来、政府・与党幹部が区域内に入ったのは初めて。地震や津波による直接の被害がない地域でも工場は操業できず、畜産農家は廃業の危機にひんしていた。政府が指定した警戒区域や計画的避難区域に不満を募らせる地元に対し、岡田氏は例外措置を検討する考えを示さざるを得なかった。【野口武則】
◇岡田氏「計画的避難区域に例外」言及
岡田氏の20キロ圏内の立ち入りには、許可を得て記者も同行した。8日午前8時すぎ、同行者を乗せたバスが路肩に止まり、一斉に防護服を着用。バスは同8時半に「立ち入り禁止」の看板を越え、警戒区域に入った。無人の町を抜けると、泥水が引いた海沿いにがれきが広がっていた。
岡田氏はまず、原発から約5キロの浪江町請戸地区で自衛官と警察官による遺体捜索を視察した。白い防護服を着た自衛官と警察官が捜索している先に、福島第1原発の排気筒が見える。防護服のマスクは息苦しく、曇り止めをしたはずのゴーグルもすぐに曇った。警戒区域に入って約1時間、車外に出たのは約10分間で、線量計は累積3マイクロシーベルトに達した。
南相馬市の有機ゴム薬品大手、大内新興化学工業の原町工場は原発から19.9キロで警戒区域に入った。大内康平社長らは防護服を着込んだ岡田氏を作業服姿で出迎え、「ここは安全です」と訴えたが、岡田氏が外したのはゴーグルだけ。工場内に津波被害はなく、大内社長は「隣の工場は操業を準備している。この差は何なんでしょう。幹事長の力で何とか再開できないか」と頭を下げた。
岡田氏は計画的避難区域に指定された飯舘村も訪れ、菅野典雄村長と面会。地域の実情に応じ、避難に例外措置を認めるよう求める菅野村長に対し、岡田氏は「基本は村外に出てもらうことだが、どういう例外を作るか整理したい」と述べ、柔軟に対応すべきだとの認識を示した。
畜産農家からの要望も相次いだ。飯舘村の畜産農家は「補償の仮払金を早く出してもらわないと廃業だ」と口々に国の対策を求めた。岡田氏は原発から17キロの南相馬市の養豚場も視察。経営者は市長の許可を得て、立ち入り禁止後も餌を与えてきたが、死ぬ豚も出たという。
一連の視察を終えた岡田氏は、福島市で記者団に対し「計画的避難区域の原則は原則だが、地元の要望を踏まえ、弾力的に考えなければならないこともある」と表明。警戒区域についても「国としては一定のルールに基づいて、現場の判断を尊重していく」と述べ、例外措置を検討する考えを示した。
毎日新聞 2011年5月8日 23時53分(最終更新 5月9日 0時12分)
「岡田幹事長にあぜん」=亀井氏
国民新党の亀井静香代表は10日午後、党本部で自民党の大島理森副総裁と会談した。大島氏によると、亀井氏は民主党の岡田克也幹事長が先に福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域を視察したことに触れ、「自分だけ防護服を着て、相手が防護服なしで会う姿にあぜんとした。心の通い合う政治をやらなければ駄目だ」と批判した。(2011/05/10-16:00)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201105/2011051000629