汚染水漏えい量は300トン
8月20日 11時30分19日、福島第一原子力発電所の敷地の山側に置かれたタンクから汚染水が漏れているのが見つかった問題で、漏れた汚染水の量は、タンクからの水漏れとしては、これまでで最も多いおよそ300トンに上ることが分かりました。
汚染水には、放射性物質が高い濃度で含まれ、東京電力では原因の究明や漏えいを防ぐ対策を急いでいます。
福島第一原発では19日、4号機の山側のタンクにためられた汚染水が漏れ、タンクの周りを囲っているせきの外側にまで流出しているのが見つかりました。
東京電力で調べたところ、タンクの1つで汚染水の水位が下がっていることが確認され、タンクから漏れ出した量は20日午前9時半現在で、およそ300トンに上ることが分かりました。
タンクからの汚染水漏れとしてはこれまでで最も多い量だということです。
タンクからどのように漏れたのか分かっておらず、今も漏れ続けているおそれがあり、東京電力では、原因の究明を急いでいます。
また、タンクにためられた汚染水は放射性のセシウムを減らす処理をしたあとの水ですが、漏れていた水を分析したところ、ストロンチウムなどのベータ線と呼ばれる放射線を出す放射性物質が1リットル当たり、8000万ベクレルと高い濃度で含まれていることも分かりました。
東京電力は漏れた汚染水の一部をせきの内側で回収するとともに、せきの外側への流出経路になった配管の弁を閉じて、外への流出を止めたということです。
しかし、すでに多くはせきの外側に流出し周辺の地面にしみこんだとみられています。
東京電力は、汚染水が漏れた現場近くにある海につながる排水溝の水では、放射性物質の濃度がそれほど高くないことから漏れた汚染水が直接、海に流れ出しているとは考えにくいとしていますが、付近の土を回収し、雨に備えてせきの周囲に積む土のうを補強するなど、漏えいを防ぐ対策を進めるとともに、周辺の放射線量を測定して、汚染水の影響が及んでいる範囲を詳しく調べることにしています。
雨水排出する配管通じて流出か
今回、汚染水が漏れたタンクは、廃炉に向けた作業が行われている4号機の山側、海から500メートルほどの場所にあります。
この場所には、高さ11メートル、直径12メートルの円筒形をした1000トンが入るタンクが26基あり、複数の鋼鉄製の板をボルトでつなぎ合わせた構造になっています。
汚染水漏れがあったのは、このうちの1つのタンクで、周辺に水たまりができていたため調べたところ、およそ300トンの汚染水が減っていました。
この26基の周りには、水漏れに備えて、高さ30センチほどのコンクリート製のせきが設置されていますが、漏れた汚染水のほとんどは雨水を排出するために取り付けられた配管を通じてせきの外側に流出したということです。
外に漏れ出した正確な量は分かっていません。
この配管は弁を閉じて、流れを遮断することができますが、雨水がたまることがないよう、弁は通常、開けた状態にしていたということです。
こうした管理が適切だったのか、今後、同じようなケースが起きた場合に備えて、東京電力は管理の在り方を検討することにしています。
去年1月やことし6月に今回と同じ構造のタンクの継ぎ目からの水漏れが相次ぎ、東京電力は、1日2回の見回りとともに、定期的に継ぎ目のボルトを締め直すなどの対応を取っていました。
規制委 海に流出ないか調査指示
原子力規制委員会は、現地の保安検査官が調べたところ、海につながる排水溝の近くに積まれた土のうの部分で、周辺より放射線量が高くなっている所があることから、漏れた汚染水が排水溝を通じて海に流出していないか、調査するよう指示しました。
今のところ、排水溝の放射線量の値は周辺の敷地と同じレベルだということですが、原子力規制庁の森本英香次長は、20日の会見で、「排水溝を通じた流出の可能性はゼロではないと思うのでしっかりと評価するように求めている」と述べました。
佐藤知事「国が前面に立って対処を」
福島県の佐藤知事は「国家としての非常事態であり、国が前面に立って対処してもらいたい」と述べ、国が具体的に対策を打ち出すことが必要だという姿勢を示しました。
タンクから汚染水が漏れた問題で福島県は20日午後、県庁で幹部を集めて緊急の会議を開きました。
この中で佐藤知事は、汚染水問題について「国家としての非常事態であり、国が前面に立って対処してもらいたい」と述べ、19日明らかになったタンクからの汚染水漏れについても国が具体的に対策を打ち出すことが必要だという姿勢を示しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130820/k10013893191000.html