2012年2月9日0時4分
東京電力福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域で、東京大と福島県のチームが津波の痕跡の調査を行い、最大で同県富岡町で21メートル超の津波の跡を測定した。ほかは7メートル前後~16メートル前後とばらつきがあるが、調査した19カ所28地点すべてで、東電が福島第一原発で想定していた津波の高さ5.7メートルを超えていた。
立ち入りが制限されている福島県の警戒区域内の津波痕跡調査は初めて。
チームは6、7の両日、南相馬市から南に向かって調査。水をかぶった痕跡や漂流物がぶつかってついたキズなどをもとに、距離計測器を使って津波の高さを暫定値として出した。
最大の21.1メートルを記録したのは富岡町の下小浜(しもこばま)海岸。崖の上のレストラン1階が大破しており、かぶった波の跡から計測した。福島第一原発の南約8キロの地点で、同原発と東電福島第二原発の間に位置する。
双葉町と大熊町にまたがる福島第一原発が受けた津波の高さを東電は14~15メートルと推定しており、これを大きく超えている。
双葉町の海水浴場では松の木の幹のキズから16.5メートルと計測。大熊町の下水処理場では、屋根の痕跡から12.2メートルと測定した。
南相馬市原町区の水道施設で12.2メートル。浪江町の海岸では、そばの建物3階の水の跡から15.5メートルとはじき出した。富岡町の毛萱(けがや)海岸ではホテル2階の跡から13.2メートル、楢葉町の河口付近では建物の屋根の跡から12.8メートルと計測した。
21メートルの津波についてチームは、湾の奥という特殊な地形が作り出した可能性があるとみている。調査した東大の佐藤愼司教授(海岸工学)は「痕跡が消えないうちに計測できた。今後データを精査し、詳しく分析していく」と話している。
調査は、土木学会(東京)などの研究者らでつくる合同調査グループの活動の一環。今後の防災計画の立案に役立てるのが目的で、岩手県や宮城県ではすでに行っている。警戒区域内は立ち入りが制限されているため、これまで詳しい調査ができていなかった。(木村俊介)
警戒区域で津波21m 浸水跡から、東大と県調査
東京電力福島第1原発から半径20キロ圏の警戒区域内で、東日本大震災による津波の痕跡調査が初めて実施され、福島県富岡町では、浸水した跡から最大で高さ21メートルにまで達していたとの分析結果を、東京大と福島県のチームが10日までにまとめた。
今回の調査で、福島第1原発、第2原発が立地する同県双葉町、大熊町、楢葉町などでは多くの地点で10メートル以上になったと推定され、東電が大震災前に想定していた津波の高さ5・7メートルを上回ったことが、あらためて裏付けられた。
2012/02/10 17:44 【共同通信】