2012/2/9 12:39
東京電力は9日、福島第1原子力発電所2号機の原子炉圧力容器底部の温度が同日午前5時時点で67.9度だったと発表した。7日早朝から注水量を増やした結果、7日午前5時の72.2度よりは下がったが、8日は65~68度で、ほぼ横ばい。東電は9日午前の記者会見で「しばらくは傾向を注視したい」とした。
2号機は圧力容器底部にある3つの温度計のうち、1つで温度が上昇している。
2月8日 12時19分
2号機 注水量増加で温度低下傾向
東京電力福島第一原子力発電所の2号機の原子炉で温度計の1つの値が上昇していた問題で、原子炉への注水量を増やした結果、一日で5度以上温度が下がり、東京電力は、徐々に低下傾向になっているとして、当面、現在の注水量を継続して慎重に監視を続けることにしています。
福島第一原発の2号機では、原子炉の底にある温度計の1つの値が上昇し、70度前後から下がらない傾向が続いていたため、東京電力は、7日、原子炉への注水量を増やし、事故直後を除けばこれまでで最も多い1時間当たり13.5トンにしました。その結果、7日午前5時に72.2度だった温度計の値は、24時間後の8日午前5時には66.7度と5.5度下がりました。
その後、午前10時には再び68度になりましたが、東京電力は、ここ数日間の温度の推移をみると、全体としては、徐々に低下傾向になっているとしています。
ただ、溶け落ちた燃料など原子炉の中の状態が分かっていないうえ、温度が上昇した原因もはっきりとつかめておらず、東京電力は、当面、現在の注水量を継続して慎重に監視を続けることにしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120208/t10015867521000.html
2012年02月07日 (火)
山崎解説:2号機の温度上昇問題は
東京電力福島第一原子力発電所の2号機で、原子炉内の温度計の1つの値が上昇しており、東京電力はきょう原子炉への注水量を増やす対策をとりました。しかしこれまでのところ温度は70度前後から大きく変化していません。
2号機で何が起きているのか。原子炉の安全性に問題はないのか。取材に当たっている山崎記者の解説です。
どの部分の温度があがっているのか?
まず2号機の原子炉の、具体的にどこの温度が上がっているのか。
温度上昇が見られるのは、2号機の原子炉の底のあたりです。
ここの温度を測っている3つの温度計のうちのひとつが、先月(1月)下旬に47度前後だったものが、徐々に上昇し2月7日現在で70度前後まで上昇しています。特に昨日までの4日で20度近くの上昇を見せています。
原因として何が考えられるのか。まず2号機も、燃料が溶け落ちるメルトダウンを起こしたと見られています。溶けた燃料は水で冷やされ塊になって原子炉の底の部分に落ちているほか、もともと燃料があった原子炉の真ん中あたりにも一部残っていると見られます。
原子炉にはこうした燃料を冷やすために、上と横の2箇所から水を24時間注水していて、スプレイ系配管を通じた上からの水は炉内の壁を伝って滴り落ちていると見られます。
また給水系配管を通じた横からの注水は、炉の底部に流れ込み水溜りをつくって燃料を冷やしていると考えられています。
温度上昇の原因は?
専門家などからは2つの可能性が指摘されています。
まず、1月下旬にスプレイ系の配管を耐久性の高いものに交換した際、一度注水を止めています。工事終了後再開しましたが、炉内をしたたり落ちる水の経路が少し変わってしまい、一部の燃料に水が掛からなくなったのではないか、というもの。これは東電も可能性として上げています。
もうひとつは、炉の真ん中あたりに残っている燃料の一部が何らかの衝撃で底にこぼれ落ち、その分が温度を上げているのではないか、というものです。
どちらにしても原子炉の中は高い放射線が飛び交い、現時点ではカメラも入れられず直接見ることができません。今はコンピューターで解析して内部を「想像」するしかなく、要は「中の状況はよくわかっていない」のです。
東京電力では去年6月に1度、燃料が温度上昇した際に注水量を増やして下げたことから、今回も同様な対応を進めています。
温度が上昇し続けると?
法令上は80度を超えると国に報告してより厳しい対策をとる必要がありますが、技術的には100度が「安定」のひとつの目安となっています。通常の原発でも運転を停止する際は、燃料の温度を100度以下に下げます。この状態を「冷温停止」と呼んでいます。
なぜ100度かというと、もし100度を超えると冷却に使っている水が蒸発を始めてしまうからです。蒸発が始まると燃料にくっついたり壁などに付着して固定化している放射性物質が蒸気とともに舞い上がり、再び炉や配管の隙間を通じて外に出てしまうことも考えられます。
また蒸発を始めると水が減り、燃料の冷却効果も下がってしまいます。燃料自体の熱でどんどん温度が上昇し続けることは避けなければなりません。ちなみに、2000度を超えると燃料が再び溶け始めます。そうならないよう十分な対策が必要なのです。
再臨界は起きていないのか?
その見極めは、臨界が始まると発生する「キセノン」と呼ばれる放射性物質の量がポイントです。核分裂が活発になり反応が継続的に連鎖すると発生する物質です。東京電力が今月1日と6日にキセノンの量を測ったところキセノンは検出できる限界を下回ったとのことです。
原子力安全・保安院や専門家も現時点のデータから見ると「再臨界」による温度上昇のリスクはかなり低いと見ています。
今後の対策は?
東電は、原子炉に入れる水の量を増やすとともに上から降りかける水の量もより増やす対策をとり始めています。
ただしあまり水の量を増やすと燃料を冷やした後にでる高濃度な「汚染水」の量も増えてしまうという問題もあります。微妙なバランスを保ち続ける対応が必要です。
水漏れ問題は大丈夫?
温度上昇の他に、最近は「水漏れ」のニュースもよく見聞きすると思います。
水漏れについては、特に先月からの寒波の襲来で配管や弁が凍結して亀裂ができ、そこから漏れるケースが頻発しています。2月6日現在で28件の漏れが確認されています。深夜や早朝、気温が下がって配管内の水が凍ると体積が増えるので、膨らんだ分、配管や弁が圧迫されて亀裂ができてしまうと見られています。
水漏れの多くは、原子炉を冷やした後にでる汚染水を処理して再び原子炉に注水する、いわゆる「循環冷却システム」に関わる設備で発生しています。これは全長4キロで多くの処理施設が配管やホースでつながっています。水が流れるので凍結しやすい上に突貫工事で造ったために多くが外に露出して設置されており、防寒対策ができていません。
幸いこれまで高濃度の汚染水そのものの漏れは確認されていませんが、福島第一原発では設置した設備がまだ様々な外的な要因に対して「弱い」ことをあらためて示したトラブルだといえます。
原発事故の「収束宣言」とは?
去年12月、政府は「原発の事故は収束した」と宣言しました。確かに燃料は温度計のデータでは100度以下となっており、原発の外に飛ぶ放射性物質の放出も発電所の敷地で年間0.1ミリシーベルトまで低下しており、政府が示していた一定の条件は達成しました。政府はこれを受けて「収束」と宣言したわけですが、「収束」という言葉が地元自治体から「事故は終わっていない」と異論が続出しました。
1号機の全体を覆うカバーを設置したり、炉への注水や汚染水処理のシステムを強化したりなど、対策が進んだのは確かです。しかし今回のように炉の温度上昇が発生したり、処理システムで水漏れが頻発したりする事例をみると、福島第一原発は「緊急時下の設備」と捉える必要があります。
そもそも溶けた核燃料が施設内に残っており、原子炉や格納容器、配管、そして建屋そのものは至るところに破損や隙間がある状態です。これは「放射能を何重にも閉じ込める」ことが求められる「原発」という施設の基本に立ち返ると、考えられない状況であることをあらためて確認しておきたいと思います。
政府や国、東京電力など関係者は、依然、非常時が続いているという意識を忘れず、先を見越した対策をとることが求められています。