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2012/01/12

伊達市は効果が少ないとして屋根の「高圧洗浄」に見切り

「屋根を高圧洗浄」除染効果低い 事故から時間経過で
2012年1月12日4時1分
 東京電力福島第一原発の事故で汚染された家の屋根を高圧水で洗う「高圧洗浄」について、専門家や住宅メーカーが注意を呼びかけている。事故から時間がたち、いくら高圧で洗っても放射線量が落ちなくなっている。水圧を強めると屋根を傷つける恐れもある。高圧洗浄を除染メニューから外す市町村も出てきた。



 東北・関東地方の8県の102市町村で進む除染の環境省ガイドラインでも、高圧洗浄は効果的な方法として挙げられている。

 福島県は昨年8月、福島市大波地区で民家の屋根を高圧洗浄した。しかし、表面から1センチのところでの放射線量は半減にも及ばなかった=表。除染前に毎時2.4マイクロシーベルトだったコンクリート屋根は高圧洗浄後でも1.6マイクロシーベルトだった。さらに、2.4マイクロシーベルトだったスレート屋根は2マイクロシーベルトに、1.2マイクロシーベルトだった瓦屋根は1.1マイクロシーベルトにとどまった。

 日本原子力学会で除染を担当する分科会の主査、井上正さんは「高圧洗浄で落ちる放射性物質の多くはすでに豪雨や台風で流れ、強く吸着しているものが残っている。排水を管理しないと放射性物質を拡散させるおそれがある」と指摘する。

 大手住宅メーカーは「住宅の構造や強度を知っておかないと逆効果になりかねない」という。瓦屋根は高圧水を吹き付けられることを想定していない。台風の時より強い水圧がかかると、瓦がはがれたり破損したりするおそれがあるという。湿気防止のため、屋根の一番上にある棟に通気口を設けている住宅もあり、防水しないと放射性物質を含んだ水を家の中に流し込みかねないという。

 民家の本格除染を始めている福島県伊達市は「効果が少ない」として屋根の高圧洗浄に見切りをつけた。日本原子力研究開発機構も同市内で、湿らせた紙タオルで屋根を拭いて除染する実証試験を始めた。機構の木原伸二さんは「スレートやトタン、瓦などいろいろな種類の屋根がある。それぞれに効果的な除染方法を探りたい」という。(杉本崇、木村俊介)






モデル除染 楢葉、富岡でスタート 実施11市町村に拡大
 政府と日本原子力研究開発機構は27日、福島第1原発事故で警戒区域に指定されている福島県楢葉町と富岡町で除染モデル事業を実施し、報道陣に公開した。警戒区域や計画的避難区域などの12市町村のうち、双葉町を除く11市町村でモデル事業が始まったことになる。
 楢葉町のモデル事業は楢葉南工業団地47万平方メートルが対象で、27日は製紙工場の屋根などを除染した。団地に隣接する仮置き場が6000平方メートルと狭いため、廃棄物を可能な限り少なくする手法を採用。土は表土と下層とを入れ替える方法にし、屋根も高圧洗浄をせずにさまざまな素材の雑巾で水拭きした。
 富岡町では、富岡二中の屋上を作業効率の良い回転式モップで洗浄した。使用した水は車載タンクにため、放射性物質を除去するという。
 モデル事業は、市町村が指定した1、2カ所を対象に、民間業者が建物や道路、樹木などを複数の方法で除染し、放射線量の低減効果を検証する。本格除染に役立てるのが目的で、11月18日に始まった。双葉町は「効果が疑問」と現時点では参加していない。


2011年12月28日水曜日