水素爆発を防ぐため、東京電力は福島第一原子力発電所1号機の原子炉格納容器に窒素を注入する作業を始めたが、注入によって高濃度の放射性物質を含む水蒸気が格納容器から漏れ出す危険性もある。
大きな事故を防ぐための手段とは言え、「苦渋の決断」が続く。
水素は、高温になった核燃料棒の被覆管(ジルコニウム)が水蒸気と反応して生成するほか水が放射線で酸素と水素に分解されてできる。原子炉内は燃料の一部が露出したままで放射線量も高く、水素は生成し続けている。外側の格納容器にたまった水素の濃度は現在1・5%になっている。
水素の濃度が4%以上になると、酸素と反応して爆発を起こす危険性がある。同原発でも先月12、14日に1、3号機で相次いで水素爆発が起きた。いずれも原子炉建屋での爆発だったが、もし格納容器で爆発が起きれば、原子炉も損傷して大量の放射性物質が拡散する最悪の事態になりかねない。
今回の注入は、反応性が低く安定な窒素で、水素と酸素の濃度を薄めて、爆発を避けるのが狙いだ。
しかし、1~3号機の格納容器の圧力は低下しており、隙間があいている可能性が高い。実際に、原子炉内から漏れたたまり水も見つかっている。
東電は格納容器の圧力や放射線量を監視しながら、格納容器の体積とほぼ同じ6000立方メートルの窒素を注入するとしているが、放射性物質を含む水蒸気が、押し出されるように放出される危険は避けられない。
「気密性が完全ではなく、放射性物質が漏れる可能性はあるが、より大きな事故を防ぐために必要な措置」。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は理解を求めた。東電は、1号機に続き、2、3号機でも窒素注入を行う予定だが、両号機の格納容器の圧力はほぼ大気圧にまで下がっており、注入で放射性物質が漏れ出す危険性は1号機よりも高い。
(2011年4月7日08時16分 読売新聞)
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2011/04/07
「気密性が完全ではなく、放射性物質が漏れる可能性はあるが、より大きな事故を防ぐために必要な措置」。
「窒素注入」苦渋の決断、放射能放出の危険