真っ暗闇の建屋内をほとんど手探りで進む作業員―。東日本大震災をきっかけに東京電力福島第1原発の危機的な状況が続いている。なぜここまで追い込まれてしまったのか。東電はなすすべがないのか。原子炉4基がそれぞれ深刻なトラブルを抱える中、作業員たちは大量被ばくの危険ともたたかいながら懸命の作業にあたっている。
■電力失う
3号機から白煙が上がった16日、陸上自衛隊のヘリコプターが上空から水を投下しようとしたが、放射線量が高すぎて断念。2号機では格納容器が損傷している可能性があり、放射性物質の拡散を一刻も早く止める必要があるが、効果的な対処ができないまま時間が経過している。
11日の地震発生後に第1原発を襲った大津波。海側には防砂堤があるだけで、かさ上げした地盤も史上最大級の津波には及ばなかった。
原子炉建屋は津波に耐えたが、屋外にあった燃料タンクや配管は壊滅的な打撃を受けた。停電後、6、7秒で切り替わるはずだった非常用ディーゼル発電機が機能しなかった一因もここにある。
さらに受電、配電設備も損傷し、第1原発は一切の電力を失うことになった。ある東電関係者は「今後、周辺地域の停電が解消されたとしても、第1原発ですぐに電気を使えるようになるかは不透明」としている。
■70人監視
16日時点で第1原発に残っているのは東電社員や協力企業社員ら約70人。1号機の北側約300メートルにある免震重要棟内の緊急事態対策本部にいて、1~3号機の圧力容器内の水位を維持するための注水を監視している。
しかし第1原発敷地内は放射線量が高くなっている。16日には毎時10ミリシーベルトの放射線量を計測。屋外で10時間作業しただけで、放射線作業従事者が緊急時にのみ許容されている年間被ばく量に達してしまう。対策本部内にいてもじわじわと放射線を浴びることになる。
東電は再び電力が供給されて大量の高圧注水ができるようになるまで、なんとか1~3号機の水位を維持したい考えだが、既に作業員から多くの被ばく者が出ている。海水をくみ上げるポンプ車に付き切りで管理することは困難だ。
また圧力容器内の水位などのデータも定期的に監視しなければならないが、建屋の中にある中央制御室は放射線量がより高い。
■常駐せず
作業をさらに困難にしているのは建屋内の照明がなく真っ暗なこと。もともと建屋には一切の窓がなく、作業員は懐中電灯の光を頼りに、建屋内の狭い通路を往復しなければならない。
このため原発中枢部の中央制御室に運転員が常駐できないという異常な状態。東電関係者は「作業員にも家族がいる。できる限りのことはしているが、国民の皆さんにも分かってほしい」と話している。
2011年03月17日木曜日
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2011/03/17
さらに受電、配電設備も損傷し、第1原発は一切の電力を失うことになった。
効果的対策打てず 東電作業員の被ばく相次ぐ