February 20, 2012
世界保健機関(WHO)は17日、公衆衛生とインフルエンザの専門家会議を開き、鳥インフルエンザウイルス「H5N1」が人間に対する感染力を強めるかに関する研究の重要性を確認する一方、H5N1ウイルスについての研究停止期間を延長することで合意した。
この会議にも出席した河岡義裕・東京大学医科学研究所教授らの研究チームと、オランダの研究チームはそれぞれ鳥インフルエンザウイルス「H5N1」に関する最新の研究成果を挙げている。しかし、この成果を報告した論文がバイオテロに悪用されることを恐れる米国からの要請に応えた米科学誌「サイエンス」と英科学誌「ネイチャー」から掲載を見送られ、河岡教授らは世界各国の研究者39人の連名で、H5N1に関する研究を60日間停止するという声明を1月20日に公表していた。
河岡教授らはこの39人による共同声明でも、世界的大流行を引き起こす危険に備える重要な研究であることを強調している。
January 23, 2012
鳥インフルウイルス研究、一時自主停止
1月20日、河岡義裕・東京大学医科学研究所教授ら世界各国の研究者39人は、英科学誌「ネイチャー」、米科学誌「サイエンス」に掲載した共同声明の中で、強毒性の鳥インフルエンザウイルスH5N1に関する研究を60日間停止することを明らかにした。
河岡教授らの研究チームとオランダの研究チームは、それぞれ鳥インフルエンザウイルス「H5NI」が、人間の間で感染力を強めるウイルスに変化する要因を突き止めようとする研究で最先端の研究成果を挙げている。一方、欧米では最近、研究成果がバイオテロに悪用されることを恐れる声が高まっていた。
声明は、これらの研究が世界的大流行を引き起こす危険に備える重要な研究で、なおかつ実験中のウイルスが外部に流出しないよう十分な対策を施した研究施設で行われていることを強調している。同時に、世界の政府、研究機関が最良の解決策を見つけるための議論が必要であることを認め、60日間自主的に研究を停止するとしている。
河岡教授は、鳥インフルエンザが人から人へ感染するようになるには、ウイルスがいつ、どのように変性するかを解明する研究で世界的に知られる。変性ウイルスが出現したとき直ちにそれに効くワクチン開発を可能とするために不可欠な研究とされており、同氏は2006年、ドイツのコッホ賞を受賞している。
2012.02.01 Wed posted at: 11:31 JST
米諮問委、鳥インフル論文の詳細公表中止を勧告 テロ懸念
(CNN) 米政府の諮問委員会は31日、強毒性の鳥インフルエンザウイルスに関する研究は公衆安全上の「重大な懸念」を生じさせる恐れがあり、詳しい情報の公表は控えるべきだとする勧告をまとめた。
勧告は米国立衛生研究所のバイオセキュリティーに関する国家科学顧問委員会がまとめたもので、米科学誌「サイエンス」および「ネイチャー」が書簡を公表した。
同委員会はこの中で、新型ウイルスに関する情報が将来のインフルエンザ流行に備えた対策のために役立てられると認定した。一方で、研究結果の発表に当たっては、テロリストによる生物兵器開発に利用される恐れのある詳細情報の公表は差し控えるよう勧告。「こうした実験に関する詳細な情報が公表されれば、特定の人物や組織、政府に情報が渡り、危害を加える目的で哺乳類に感染するA型H5N1型インフルエンザを発生させる手助けとなる」とした。
同委員会はまた、「これは生命科学分野の研究において前例のない勧告であり、われわれは公表することのメリットと、このような前例を作ることによる悪影響の両面について入念に検討した」とも述べている。
この問題は昨年12月、米ウィスコンシン大学とオランダの科学者がフェレット間で感染する強毒性のインフルエンザウイルスを作成したと報じられたことをきっかけに浮上した。オランダの研究チームはサイエンスに、ウィスコンシン大学はネイチャーにそれぞれ論文を発表する予定だったが、両誌とも掲載を見合わせることに同意している。
これに対して鳥インフルエンザ研究に携わる研究者からは、論文が検閲されれば研究者間の情報共有が難しくなる一方で、テロ防止にはほとんど役に立たないと指摘する声も出ている。
2012年 02月 15日 17:06 JST
鳥インフル研究に生物兵器転用の恐れ、WHOが緊急会合
[ロンドン/ジュネーブ 14日 ロイター] 世界保健機関(WHO)は16―17日、強毒性鳥インフルエンザH5N1に関する研究について、スイス・ジュネーブで専門家22人を集めて緊急会合を開催する。
同研究をめぐっては、米政府の科学諮問委員会(NSABB)が生物兵器への転用を懸念し、論文が科学誌に掲載される前に内容の一部削除を求めたことから、世界各国の専門家らは先月20日から60日間研究を停止していた。
会合には、論文を執筆した研究者らのほか、掲載するはずだった科学誌サイエンスとネイチャーの編集者やNSABBの代表者が出席する。
議長を務めるWHOの福田敬二事務局長補代理は、同会合で論文内容の掲載の仕方や誰がそれにアクセスできるかなどについて合意を得たいとしている。
また福田氏は「こういったウイルス研究を続けるのは重要だが、リスクも引き起こす」とし、「多くのことがまだ分かっていない。問題は研究を続けるかどうかではなく、いたずらに不安やリスクを引き起こさないように、どのような条件下で研究を行うかということだ」と語った。
多くの研究者らは、このような研究をやめるのは危険な先例をつくることになると指摘する。元WHOヘルスセキュリティー・アドバイザーのデービッド・ハイマン氏(英王立国際問題研究所)は、有効なワクチンや診断検査の開発において、研究は不可欠だと主張した。
また、ハイマン氏は「研究と情報の提供方法において最良の実施フレームワーク」を国際的に合意することが、出し得る最高の成果だとした上で、「情報を提供しなくても、それを手に入れる方法はあり、悪用しようとする科学者がいることを理解することがとても重要だ」と述べた。
2012.02.19 Sun posted at: 16:12 JST
鳥インフル論文は当面非公表、テロ悪用の懸念で WHO
(CNN) 世界保健機関(WHO)は17日、米国が生物テロ兵器への悪用を懸念し強毒性鳥インフルエンザの「H5N1」ウイルスの論文2本の一部非公表を求めた問題で専門家会合を開き、論文は本来、全文掲載すべきとしながらも現段階での公表は見合わせるとの見解を発表した。
WHOは声明で、現時点での公表見合わせを決めた理由について、研究論文が提起した課題について意見交換などを通じた相互理解をさらに深め、ウイルスの安全管理対策面で検討が必要なことを挙げた。この検討の方法や開始する時期には触れていない。
2本の論文は、オランダと米ウィスコンシン大学の研究チームが別々に開発した人工的に変異させたH5N1ウイルスが、哺乳類から哺乳類へ容易に感染し致死性を持つ可能性に触れていた。2チームはこの変異させたウイルスを、インフルエンザにかかった場合、人間と非常に似た症状を示すというフェレットに感染させて実験していた。
しかし、ウイルス開発が昨年12月に報じられて以降、テロ対策と絡めた議論が拡大。バイオセキュリティー政策に関する米政府諮問機関は今年1月、このウイルスの研究データは将来の鳥インフルエンザ感染流行への準備で有効な材料であるとしながらも、テロリストへの情報流出を阻止するため研究論文はウイルス作成方法などを削除して公開されるべきだと主張していた。
論文2本は米科学誌サイエンスと英科学誌ネイチャーに掲載される予定だったが、両誌は結局見合わせている。
WHOは声明で、論文は一部公表より全面公表の方が公共衛生により恩恵を与えるとしながらも、ウイルスの安全管理などの評価に最初に取り組むとの考えを示した。
また、人工的に変異させたH5N1ウイルスの研究を中断させている措置の延長も求めた。ただ、自然界で発見される鳥インフルエンザウイルスの研究は今後の予防措置に必要として継続を認めた。WHOのケイジ・フクダ事務局長補によると、自然界の鳥インフルエンザの感染者の致死率は60%となっている。
“鳥インフル 安全管理の議論必要”2月18日 6時41分
毒性の強い鳥インフルエンザの研究が、テロに悪用されるおそれがあるとして、アメリカ政府が公表を控えるよう勧告した問題で、WHO=世界保健機関の専門家会合は、17日、実験の安全管理などについて、さらに議論を続ける必要があるとする見解を発表しました。
この問題は、日本の研究者などが行った、毒性の強い鳥インフルエンザの研究の論文について、アメリカ政府が「テロに悪用されるおそれがある」として、詳細な公表を控えるよう勧告したものです。
この問題について、ジュネーブで2日間の緊急の専門家会合を行ったWHOは、17日、記者会見を開き、新たなインフルエンザの世界的な流行に備えるうえで、この研究は極めて重要であり、論文は公表すべきだという点で認識が一致したことを明らかにしました。
そのうえで、こうした研究をほかの実験室で行った場合に、ウイルスが外部に漏れ出さないようにするための安全管理などについて、さらに専門家が議論を続ける必要があるとする見解を示しました。
アメリカ政府に論文の公表を控えるよう求められた、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授は、「これまで、私たちの研究の重要性がしっかりと評価されず、もしテロリストがこのウイルスを作ったらどうするのかなど、仮定の話ばかりが先行してしまった」と指摘しました。
WHOではことし夏までに再び会合を開き、一定の結論を出したい考えです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120218/t10013113621000.html