2012年 01月 31日 10:03 JST
[ニューヨーク 30日 ロイター] 格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は30日、高齢化に伴い増加を続ける医療費を抑制できなければ、2015年にも「高格付けの多くの」20カ国・地域(G20)諸国の格付けを引き下げる可能性がある、と警告した。
欧州の先進国と日本、米国について、高齢化で社会の安全網維持の負担が増すため、今後40年間の財政への打撃が最も深刻、としている。
S&Pのアナリスト、マルコ・ムルスニク氏はリポートで「着実に増加する医療費が向こう数十年、財政を大きく圧迫する」とし「政府が社会保障制度を改革しなければ、持続不可能になる」との見方を示した。
S&Pによると、諸国が改革を実施しなければ、医療費増を背景とする格下げは3年以内に始まる可能性がある。そうなれば、2020年には、ジャンク等級(投機的水準)の格付けの国が増える、としている。
S&Pは、東南アジアなどの新興国については、人口動態や経済成長の面で好ましい状況にあるため、まだ余裕がある、との見方を示した。
一方、高齢化関連の歳出抑制に向けた改革と財政均衡策を2016年までにとれば、2050年までに医療費増大を相殺できるとしている。
[FT]先進国信用格付けの足を引っ張る医療費高騰
2012/2/1 14:00
(2012年2月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米格付け大手のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、主要先進国は、医療費の上昇を抑制する法制度改革を実現しなければ、2010年代の中ごろまでに信用力の低下に直面すると警告した。
■40年間でGDP比倍増の可能性も
さらには、医療費支出を抑える努力を怠ると、多くの先進国で国内総生産(GDP)に占める医療費の割合が40年でほぼ倍増すると予測した。
1月31日に発表されたS&Pのリポートは、国家財政が逼迫(ひっぱく)する中で、公的支出の抑制を目指す国々が直面する課題の深刻さを強調する内容となっている。
この中で特にドイツ、米国、英国、フランスを例に挙げ、「当社の予測では典型的な先進国の医療費の対GDP比は10年の6.3%から50年には11.1%に達する」と分析。
とりわけ欧州の先進国は「人口構成と経済成長の両面でやや有利な」新興諸国と比較して医療費を抑制する「余地が限られている」と指摘した。
しかし同時に、「いくつかの新興国では人口構成から生ずる予算上の課題に取り組む緊急性は先進国とほぼ同様」とも述べた。
■反対派を刺激しない改革を早急に
リポートは、平均寿命の伸びだけで医療費の上昇圧力は説明できないことを強調し、技術の発達や医療制度の充実も医療費増大の大きな要因となっていることが十分に理解されていないと指摘。先進20カ国・地域(G20)では年金が予算の重要問題となっているが、半数以上の国で人口高齢化にともなう公的支出増加の多くを医療費が占めていると解析した。
リポートを作成したマルコ・ムルスニク氏は、最悪のシナリオは実現しないとして、予算引き締めに加えて、年金・医療制度改革と経済成長を組み合わせた形が「将来的には期待できる」と言う。
同氏はまた、昨年のスロベニアの国民投票で年金支給開始年齢引き上げが否決されたことなど改革反対の動きにも言及。こうした経験を生かして、反対派を刺激しないような医療制度改革を漸進的かつ早急に実現していくことが重要と付け加えた。
By Sarah Neville
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