食品の放射能基準は厳しすぎ…文科省審議会、異例の注文
厚生労働省がまとめた食品中の放射性セシウムの新基準について、文部科学省放射線審議会は16日、「必要以上に厳しい」として、被災地の食生活や農業への影響に配慮するよう異例の注文を付けた。ただ、基準そのものについては了承した。一方、厚労省は4月施行に向けて、予定通り、法整備を進める方針だ。
厚労省の基準案は、食品による年間の被曝(ひばく)線量を1ミリシーベルトと設定し、一般食品は1キロあたり100ベクレル、乳児用食品はその半分の50ベクレル、牛乳も50ベクレルなどと定めている。
審議会は、この基準について、放射線による障害を防ぐ観点から「差し支えない」と答申した。一方で別紙で意見、注文を付けた。
http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY201202160243.html
放射性物質:乳児食品基準、50ベクレル堅持 文科省審議会答申、厚労省4月実施
厚生労働省の諮問で食品中の放射性物質の新基準値案を審議していた文部科学省の「放射線審議会」(会長・丹羽太貫(にわおおつら)京都大名誉教授)は16日、新基準値案を批判する異例の意見書をつけつつ、同案を認める答申をした。意見書では、乳児用食品の1キロあたり50ベクレルを100ベクレルに緩めても健康は守られると記したものの、厳しい基準値を堅持する厚労省に歩み寄った。
審議会は昨年12月27日から6回の審議を重ねた。毎回、大半の委員から「現行の暫定規制値で国民の健康は十分に守られており、基準値の強化は福島の復興の妨げになる恐れがある」など批判する意見が続出した。
しかし「農産物の流通が滞ることはない」との厚労省の意向は覆せず、「食品の放射性セシウムの濃度は十分に低く、(新基準値が)放射線防護の効果を高める手段にはなりにくい」との批判的な意見書を付けて認めた。
新基準値案は一般食品100ベクレル▽乳児用食品50ベクレル▽牛乳50ベクレル▽飲料水10ベクレル。4月から実施される。【小島正美】
放射線審、食品新基準「妥当」と答申へ 「厳しすぎ」と意見
2012/2/16 12:22
文部科学省の放射線審議会は16日午前の会合で、食品中の放射性セシウムの新しい基準値案について「妥当」とする答申をまとめた。厚生労働相から諮問を受けていた。ただ、算出の過程で汚染を過大に想定しており、新基準値は厳しすぎるとの意見を添えた。規制の強化が被災地の産業を圧迫しかねず、検査体制を整えるための労力や費用が膨らむことを懸念している。
厚生労働省は4月から新基準値を運用する予定。放射線審の意見をどう踏まえるかが注目される。
厚労省の新基準値案では、食品を4種類に分類する。最も規制の厳しい「飲料水」は1キログラムあたり10ベクレルと、昨年3月に策定した現行基準に比べて20分の1になる。粉ミルクなどの「乳児用食品」と「牛乳」は同50ベクレル、それ以外のほとんどの食品が該当する「一般食品」は同100ベクレルとする。
摂取した食品による内部被曝(ひばく)の合計が年間1ミリシーベルト以下になるように設定。万全を期すため、国内で流通する食品の半分以上が汚染されていると仮定して算出してある。
放射線審は、放射線防護の観点から新基準値案は妥当と結論づけたが、最近の調査では食品中のセシウム濃度は低く、新基準値の算出方法は実態に合わない極端な仮定をしていると問題視している。また、乳児用食品と牛乳は一般食品と別扱いしなくても、子どもの健康に十分配慮できていると指摘した。
商品の放射線量新基準値案 文科省“注文付き”了承
2012.2.16 21:57
文部科学省の放射線審議会は16日、食品に含まれる放射性セシウムについての厚生労働省の新基準値案を了承した。ただ審議では、基準が「厳しすぎる」との意見が相次ぎ、生産者への配慮などを求める異例の意見も付いた。新基準値は厚労省の審議会を経て、4月から適用される見通し。
新基準値では、食品による年間被(ひ)曝(ばく)線量を5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに厳格化。「一般食品」は1キロ当たり100ベクレル、「牛乳」と粉ミルクなど「乳児用食品」は同50ベクレル、「飲料水」は同10ベクレルとなり、暫定基準値の4分の1から20分の1になる。
これに対し、審議会の答申では、「差し支えない」としたものの、福島県産の農産物などの流通に影響する可能性もあり、地元の生産者らの意見を最大限尊重して運用すべきだとの意見が付いた。
検査の精度や検査数の確保などの重要性も指摘。乳児用食品と牛乳を一般食品より厳しくしたことについては「特別の基準値を設けなくても子供への配慮は十分」とした。
これまでの議論では、最近の調査で食品のセシウム濃度は十分に低いとして、厳格化のデメリットが指摘されていた。国産食品の大半が汚染されているとの仮定で算出されたことに対し、「実際に比べて汚染割合が大きい」として「基準値が低いほど良いというイメージが先行している」との意見も出た。検査体制も「測定時間が長くなり、サンプル数が減る」と見逃しの可能性が指摘された。
健康被害だけでなく生産者の生活への影響も考えるべきだとの声も上がった。
1月の審議会に出席したコープふくしまの佐藤理(おさむ)理事は「新基準が施行されれば広範な田畑が作付け制限を受けることは必至。農業県である福島の復興を閉ざすに等しい」と訴えていた。
こういった指摘に、厚労省は「実態に対応できない基準を作ることはあり得ない。農林水産省と十分に協議し、福島であっても大きな影響はないと聞いている」と説明している。
放射線審議会は新基準値案が安全かどうかを判断するのが目的のため、意見を添えた上で、答申がまとまったが、ある委員は「食品の流通だけを考えるのではなく、政治が福島の復興の全体像を描くべきだった」と批判した。
食品の放射性物質 新基準に見解
2月16日 15時5分
食品に含まれる放射性物質の基準がことし4月から大幅に厳しくなることについて、国の放射線審議会は、食品の種類によっては流通が難しくなるものが出るおそれがあり、社会的な影響を最大限考慮すべきだとする見解をまとめました。
食品に含まれる放射性セシウムの基準値は、ことし4月から「一般食品」が現在の暫定基準値の5分の1の、1キログラム当たり100ベクレルなどと、大幅に厳しくなります。
これについて、厚生労働省から意見を求められた国の放射線審議会は、16日の会合で、新しい基準値は、実態よりも放射性物質による汚染を多めに見積もっており、これを多少上回ったとしてもリスクの上昇は僅かだとする見解をまとめました。
また、基準を厳しくすることで食品の種類によっては流通が難しくなるものが出るおそれがあり、社会的な影響を最大限考慮すべきだなどと指摘しています。
さらに、50ベクレルとなる乳児用食品と牛乳の新たな基準については「子どもへの配慮はすでに十分なされている」として、一般食品と区別することに疑問を投げかけています。
ただ、新たな基準そのものについては「差し支えない」として了承しました。
見解について、放射線審議会の丹羽太貫会長は「新しい基準値は、安全を確保するための配慮が十分なされているので、子どもへの健康影響を必要以上に心配したり、大人用と子ども用で食膳を2つに分けたりする必要はないことを母親たちに知ってほしい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120216/t10013066181000.html