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2012/02/18

小沢一郎公判  石川被告ら元秘書3人の調書不採用

小沢元代表公判:石川議員らの調書却下 東京地裁
 資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の第14回公判が17日、東京地裁であり、大善文男裁判長は衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人の供述調書の多くについて証拠採用を却下した。元代表の関与を認めた石川議員の調書について「検事が再逮捕を示唆したり『元代表の関与を否定していると元代表が起訴される』などと懐柔・説得して調書に応じさせた疑いがある」などと述べ、任意性を否定した。

立証の柱だった石川議員らの調書が失われたことで検察官役の指定弁護士には厳しい内容となった。4月下旬にも言い渡される判決に影響を与えそうだ。。


 元秘書3人の供述調書計42通のほか公判調書を指定弁護士が証拠請求していたが、42通のうち29通が全部または部分的に却下された。石川議員の調書は13通中8通が全部、3通が一部却下された。石川議員の後任の事務担当者、池田光智被告(34)が04年の土地購入を05年分収支報告書に計上することを元代表に報告したとする調書は一部採用された。

 石川議員は取り調べや保釈後の10年5月の再聴取で「04年分収支報告書の内容を元代表に報告し、了承を得た」と供述したとされるが、自身や元代表の公判では全否定。指定弁護士は「元代表がいる法廷で不利なことは証言しにくい。証言も自身の公判からさらに元代表に迎合した内容になった」として、採用を求めていた。

 大善裁判長は、石川議員が「隠し録音」した再聴取について「検事が『関与を認める供述を維持すれば元代表の不起訴も維持される』と繰り返し推奨している。強力な利益誘導で、虚偽供述に導く危険性の高い取り調べで違法不当」と批判。「調書は検察審査会への提供が予定されており、検事の(不起訴が維持されるとの)説明には妥当性に問題がある」とも指摘した。

 再聴取後にこの検事が作成した捜査報告書に録音内容にないやりとりが記載されていた問題にも触れ「検事は法廷で『(作成の際)記憶が混同した』と証言したが、信用できない」と述べた。さらに、特捜部の取り調べの問題点について「複数の検事が(元代表が関与したと供述するよう)圧力をかけていたこともうかがわれ、組織的なものだった」と指摘した。

 公判は来月、論告と最終弁論を経て結審する。【和田武士、鈴木一生】

 <決定理由の骨子>

・石川議員の取り調べでは検事が「元代表が起訴されない」などと懐柔・説得して調書作成に応じさせた疑いがある。

・石川議員の保釈後の再聴取では検事による強力な利益誘導があり、虚偽供述に導く危険性の高い取り調べ方法だ。

・池田元秘書が「04年の土地購入代金支払いを05年分報告書に計上することを元代表に報告した」とした調書の一部は任意性に疑いがない。

毎日新聞 2012年2月17日 12時03分(最終更新 2月17日 13時23分)






'12/2/18
裁判長「強い利益誘導」 小沢元代表公判の調書不採用


 「強力な利益誘導で、虚偽供述に導く危険性の高い取り調べ方法だ」。小沢一郎民主党元代表(69)の公判で17日、多くの検察官調書を証拠と認めなかった東京地裁の大善文男裁判長は、決定理由で東京地検特捜部の捜査を厳しく非難した。

 特に問題視したのは元秘書の石川知裕衆院議員(38)に対する田代政弘検事の取り調べ。

 石川議員が保釈後の再聴取を隠し録音した記録から、元代表が不起訴となる見通しを示唆して関与を認めた供述を維持するよう迫ったことを利益誘導だと認定。

 その上で「そもそも検事が調書を一方的に作成したことがうかがわれ、許容できないことは明らか」と違法性を指摘した。さらに「複数の検事が石川議員に圧力をかけたことがうかがわれる」と組織としての取り調べ手法の危うさも挙げた。

 法廷で田代検事が「録音されていると分かっていれば、このような取り調べはしなかった」と証言したことも、大善裁判長は「取り調べの可視化(録音・録画)がされていれば、できない取り調べ方法だったことを自ら認めた」と酷評。

 捜査報告書に実在しないやりとりを記載したことを「記憶の混同」とした釈明に対しては「具体的かつ詳細な記載で、にわかには信用できない」と一蹴した。

 ほかの検事の問題も指摘。池田光智元秘書(34)の取り調べメモを廃棄した花崎政之検事について「適正に取り調べたことの裏付けを自ら失わせた」とした。





捜査報告書全文入手、実在しないやりとりも
< 2012年2月17日 14:13 >
 民主党元代表・小沢一郎被告が政治資金規正法違反の罪に問われている裁判で、東京地裁は17日、小沢被告の関与について認めた元秘書の供述調書の大部分を、信用できないとして証拠採用しないことを決定した。日本テレビは、この供述調書とは別に、元秘書・石川知裕被告を取り調べた検事が作成した捜査報告書の全文を入手した。この捜査報告書には、検事が事実と異なる記載をしていたことがわかっており、裁判所は、供述調書を却下した理由の一つに挙げている。

 捜査報告書の全文では、取り調べの状況として、石川被告と検事のやりとりが、質問と答えの形で詳細に記されている。

 検事「小沢先生に対する報告とその了承、どういう形で供述したか覚えていますか」

 石川被告「ヤクザの手下が親分を守るために嘘(ウソ)をつくようなことをしていたら、選挙民を裏切ることになるよって言われちゃって。これは結構効いたんですよ。それで堪えきれなくなって話したんですよね」

 しかし、石川被告はひそかにこの日の取り調べを録音しており、小沢被告の関与を認めた理由を説明したこのやりとりは、実際にはなかったことが明らかになった。

 捜査報告書には、他にも、実際にはなかったやりとりが書かれていた。検察審査会は、この捜査報告書を「小沢被告を起訴すべき」と判断した根拠の一つしていた。こうしたことから、弁護側は検察審査会の議決に基づく起訴は無効だと主張しており、判決に与える影響が注目されている。




特捜の惨敗?小沢氏側「有罪の証拠消えた」

 小沢一郎民主党元代表(69)が政治資金規正法違反に問われた陸山会事件の公判で、小沢被告の関与を認めた元秘書の供述調書の多くを証拠から排除した17日の東京地裁決定について、検察幹部や識者らは厳しい検察批判と受け止め、「特捜の惨敗」という声もあがった。


 一方、判決の行方はなお見えず、検察官役の指定弁護士と弁護側は、強気の姿勢を崩さなかった。

 ◆強気

 小沢被告の弁護団は閉廷後に記者会見。主任弁護人の弘中惇一郎弁護士(66)は、陸山会元事務担当者・石川知裕衆院議員(38)の調書の大半を却下した今回の決定によって「有罪とする証拠はほとんど消えた」と評価し、「最終的に無罪あるいは公訴(起訴)棄却を勝ち取りたい」と自信をのぞかせた。

 ただ、後任の池田光智被告(34)が小沢被告への「報告・了承」を認めた調書は一部が採用された。弘中弁護士は、「こちらにとって不利益な記載もあるので、判決に向けて十分気をつけて主張していきたい」とも述べた。

 一方、指定弁護士の大室俊三弁護士(62)も閉廷後に取材に応じ、「予想の範囲。間接事実の積み重ねで、十分有罪を立証できる」と強気の構え。録音記録があったことで調書が却下されたことについては、「過去に、弁護士として検事の利益誘導などを指摘しても聞き入れてもらえなかったが、裁判所がいい方向に動いていると感じる」と話した。

 ◆検察

 大阪地検特捜部の不祥事を受け、取り調べの録音・録画(可視化)の試行などを進める検察。「東京の特捜部でも同じ問題が起こっていたということ。組織として、一定の方向に沿った供述を取ろうとした点が問題だ」。ある最高検幹部は厳しい表情を見せた。

 別の幹部も「決定が言及した取り調べメモや可視化の問題は、まさに検察改革を進めている分野」とし、「改革を徹底しなければならない」と語った。

(2012年2月18日15時08分 読売新聞)

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120217-OYT1T01244.htm