菅政権が発足して8日で丸1年。この間、菅直人首相は衆参両院の多数が異なる「ねじれ」に翻弄(ほんろう)されて迷走。民主党の小沢一郎元代表との主導権争いも、政権の求心力を低下させた。「不信任政局」をきっかけに、首相の退陣は既定路線となり、官邸内には虚脱感が漂う。
「小沢に党の資金を使わせてはいけない」。首相は先週末、同僚議員にこう諭した。首相を退いても、後継首相に小沢氏の息のかかった人物だけは断固阻止する-。この議員は、首相がなお「脱小沢」を意識していると改めて感じたという。
昨年9月の代表再選を受け、首相は当時外相だった岡田克也氏を幹事長に起用し、「小沢問題を片付けてほしい」と指示。小沢氏が資金管理団体の政治資金規正法違反事件で強制起訴された際は、自発的離党を要求。これを拒否した小沢氏を党員資格停止処分とした。
首相には、党再生には小沢氏の「政治とカネ」の問題にけじめを付ける必要があるとの判断があった。その一方、「脱小沢」を政権浮揚に利用したのも事実だ。こうした手法は、小沢氏を支持するグループの反発を招き、党内対立に発展。国民不在の政争に世論は離れ、就任当初4割あった支持率は、軒並み2割前後まで落ちた。
国会対応も、後手に回ることが多かった。昨夏の参院選で敗北。衆院では300議席を上回る多数を持ちながら、参院では第1党の座を失い、首相は「熟議の国会」を呼び掛けたが、法案処理は滞った。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の対応や閣僚の失言なども相次ぎ、守勢を強いられた。
こうした中、3月11日に東日本大震災が発生、首相は福島第1原発事故の対応に全力を挙げた。ただ、初動対応のまずさや情報管理の不備が露呈し、政権への不信感が増幅。自民党に呼び掛けた大連立も拒否され、退陣論の流れを強めた。
首相の早期退陣論が固まる中、与野党では「ポスト菅」選びや大連立をめぐる動きが活発化。首相は夏までの延命をなお模索しているが、「早く辞めてもらわないと震災復興が遅れるばかりだ」(政府筋)との声が漏れる。(2011/06/07-20:53)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201106/2011060700893
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2011/06/07
「小沢に党の資金を使わせてはいけない」。首相は先週末、同僚議員にこう諭した。
「脱小沢」効かず弱体化=震災対応も後手続き-菅政権、8日で1年