千葉県が出荷自粛を求めていた旭市産の「サンチュ」が、関東などの大手スーパーで売られていたことがわかった。仕入れ担当者や生産業者は、暫定規制値を下回る検査結果を受け、独自に判断したとしている。流通を規制する「出荷制限」と「出荷自粛」。そのあいまいなはざまで、混乱が起きている。
風評被害によって、出荷量が落ち込んだ東北や関東各地の野菜。
その安全性やおいしさをアピールするためのイベント「がんばろう! 東北応援フェア」が、松坂屋上野店、大丸ららぽーと横浜、大丸東京店で13日から始まった。
大丸東京店では、地元の野菜や、地元のお酒などを販売している。
来場客は「こういう形で協力したいなと思っています」と話した。
しかし、そんなムードに水を差す事態が起きた。
千葉県から出荷の自粛を要請されていた野菜が、都内のスーパーで販売されていたことが明らかになった。
東京・品川区の「イオン」では、出荷自粛の指示が出されていた時期に収穫された、千葉・旭市産のサンチュを7日に販売していたという。
イオンによれば、3月30日から4月7日までの間、関東の57店舗で、旭市産サンチュ、およそ2,200パックを販売したという。
客は、「やっぱりお店に出ていれば、安全だと思って、買っちゃうと思いますけど」、「安全という保証もないじゃないですか。やっぱり、そういうのが売られる時点で怖いですね」と話した。
なぜ、「出荷自粛中」の野菜が市場に出回ったのか。
イオンでは、自粛対象の野菜などは販売しない社内のルールを設けていたが、バイヤーの判断で仕入れを行ったという。
問題のサンチュを生産した業者は、「出荷自粛後の検査で暫定規制値を下回ったことで、出荷した」と話しており、イオンによれば、売り場から撤去したサンチュを検査した結果、検出された放射線量は、国の暫定基準値を下回ったことを確認したという。
出荷の自粛をしていた野菜が出回る事態に対し、政府や千葉県の考えは煮え切らない。
千葉県農林水産部は13日午後5時ごろ、会見で「客観的なデータをお持ちのうえの対応ということもありますので、相手の業者の方のご理解もいただいた中で進められたことだということですから、まったく理解できないということではないのかなというふうには思っています」と述べた。
枝野官房長官は「県に対して、適正な管理をするよう要請をしたところでございますが、出回っていたもの(サンチュ)については、出荷規制の対象のものではありませんし」と述べた。
一方で、放射性物質による農作物への影響が止まらない。
枝野官房長官は「露地栽培の原木シイタケについて、当分の間、出荷を差し控えるよう指示をいたします」と発表した。
出荷制限の対象となるのは、福島県の伊達市、相馬市、南相馬市などで栽培された露地栽培の原木シイタケ。
このうち、飯舘村で栽培された露地栽培の原木シイタケからは、1kgあたり1万3,000ベクレルの放射性セシウムが検出され、摂取制限の指示も出された。
しかし中には、放射線量の調査を行っていない自治体や、4月10日の時点で福島県が出荷制限を解除した、いわき市も含まれており、県は菅首相に対して、明確な基準を示すよう求めている。
福島県農水部長は「県といたしましては、若干の疑義がございますので、今後、国に対して、その疑義について見解を求めてまいる考えでございます」と述べた。
周辺の住民たちの生活を大きく狂わせた福島第1原発の事故。
13日、東京電力のトップが会見を行った。
東京電力の清水正孝社長は、避難している周辺住民などへの補償について、「避難を余儀なくされている方々に、当面、必要な資金を補償金の仮払いとしてお支払いすることについても、検討しているところでございます」と話したが、具体的な時期や金額に対しては、「長期に及んできているということもあるので、1日も早く仮払いをしていきたいと」と話した。
また、事態収拾の対応策について、清水社長は「対応策を1日も早くお示ししたいということでございます。(それはいつになる?)これはもう1日も早く、現在(話を)詰めておりますので」と述べた。
事態収拾のめどや方策についての質問にも、「1日も早く」と繰り返し、具体的には答えなかった。
記者からは、「両方とも1日も早くというのは、言葉は悪いですけど、そば屋の出前みたいなふうに聞こえてしまって」との声も上がった。
自らの進退について聞かれた清水社長は、「私自身の最大の責務は、福島第1原子力(発電所)をはじめとする現状の事態の収束に最大限、取り組むこと」と述べた。
事態の収束に向け、福島第1原発では、2号機の「トレンチ」にたまった汚染水を、復水器に移す作業が行われ、使用済み燃料プールの中の燃料棒を取り出す計画を検討していることが明らかになっている。
サンチュの店頭販売問題について、混乱を招いた要因の1つに、行政の対応がある。
農産物からの放射性物質検出を受け、当初打ち出された「出荷自粛」は、自治体が農協などに自粛を要請するもので、明確な法的根拠はない。
一方、「出荷制限」は、原子力災害特別措置法に基づき、国が都道府県などに指示を出す、より強い措置ということになる。
千葉・旭市産のサンチュをめぐり起こった今回の問題。
まず、放射性ヨウ素の暫定規制値超えを受けて、3月29日に千葉県が旭市に出荷自粛を要請した。
この時点では、イオンは販売を控えていたが、社内の買いつけ担当者が、独自の判断で仕入れを決定し、自粛対象のサンチュが30日から店頭に並んだ。
さらに、4月4日の出荷制限格上げ後も、都内の1店舗では、在庫管理ミスで、7日まで店頭に出ていたという。
この間、販売されたのは2,200パックだという。
イオンは、販売されたのは出荷制限以前のものだとしているが、出荷自粛・出荷制限、いずれの措置も、こうした事態をチェックできずに、混乱を招く結果となった。
(04/14 00:36)
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2011/04/14
イオンでは、自粛対象の野菜などは販売しない社内のルールを設けていたが、バイヤーの判断で仕入れを行ったという
出荷自粛「サンチュ」店頭販売問題 「出荷制限」と「出荷自粛」めぐり混乱も