日本の原発で炉心溶融が進みつつある深刻な事態。米国では、放射性物質が放出された先例となっているスリーマイル島(1979年)の「悪夢の再来」との受け止め方も出ている。
「原発が危険にさらされている」(ワシントンポスト電子版)、「日本が避難命令発令」(ニューヨーク・タイムズ電子版)―。米主要メディアは12日までに、日本で原子力緊急事態宣言が出されたことを大きく紹介した。ダウ・ジョーンズ通信は「冷却水がなくなれば、米国最悪の原子力事故であるスリーマイル島事故と同じ結果になる」と報じた。
反核団体「ビヨンド・ニュークリア」のケビン・カンプス氏は、数日中に、原子炉とは別の燃料プールでも冷却水が沸騰し、「チェルノブイリ原発事故以上の壊滅的な被害が起きる可能性がある」と懸念を示す。「日本のチェルノブイリはロシアへの脅威か」と、ややセンセーショナルに報じたロシア紙もある。ロイター通信は、原子炉格納容器から蒸気を放出したことなどに触れながらも、「危険が去ったとは到底言えない」と指摘した。
日本は、インドと原子力協定締結交渉を進めているほか、昨年10月にベトナムの原発2基の建設を受注することで合意するなど、安全性を売りに、官民一体となって新興国への原発売り込みを行ってきた。だが、この事故で“神話”は崩壊。地球温暖化対策に役立つなどとして、原発を再評価する「原子力ルネサンス」の動きが世界的に活発化していたが、この動きにも、ブレーキがかかる可能性がある。ただ、中国やインドは原発建設計画に、変更はないことを強調した。
国際原子力機関(IAEA)によると、世界で稼働している原発の20%は地震の多い地域にあるという“怖い”データもある。事故を受け、国内では、原発を抱える各地の自治体や原発関係者から「大変な事態だ」「原発を取り巻く環境が変わってしまうかもしれない」と、深刻に受け止める声が相次いでいる。中国電力島根原発関係者は「バックアップシステムが多数あるのに、こうした事態になり、正直ショックを受けている」と険しい表情。まずは被害防止が先決だが、原発の耐震性の見直しのために、早期の原因究明も求められている。
◆チェルノブイリ原子力発電所事故
1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原発4号炉で、試験運転中の原子炉が爆発、火災発生。欧州の20万平方キロメートル以上が放射性物質で汚染され、半径30キロ圏内の市民が強制避難、周辺地域で甲状腺がん増加の報告。死者は数千人から数万人と諸説ある。国際原子力機関などが定める国際事故の評価尺度は、8段階で最悪の「レベル7」。
◆スリーマイル島原子力発電所事故
1979年3月28日、米国ペンシルベニア州のスリーマイル島原発2号炉で発生。冷却水ポンプの故障、稼働した緊急炉心冷却装置(ECCS)を運転員が止めたことで、圧力容器内から冷却水が流失、炉心の3分の2が露出した。周辺住民は避難したが被曝(ひばく)は最大で1ミリ?で健康への影響はほとんどなかった。「レベル5」。
(2011年3月13日06時01分 スポーツ報知)
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2011/03/13
日本は安全性を売りに、官民一体となって新興国への原発売り込みを行ってきた。
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