経営破綻した元東証2部上場の産業用機械メーカー「春日電機」(旧本社・東京都三鷹市)を巡る特別背任事件で、約5億5000万円の貸し付けを受けたマーケティング会社「アインテスラ」(東京都中央区)の返済原資とされていた保有株の大半は、借金の担保に差し入れられていたことが捜査関係者への取材で分かった。警視庁捜査2課は、逮捕された春日電機元社長、篠原猛容疑者(53)が返済の見込みがないことを認識していたとみている。
捜査関係者によると、篠原容疑者が実質的に経営していたアインテスラは08年6月までに、春日電機株の18%超を買い占めた。
関東財務局に出された大量保有報告書によると、取得に要した資金約6億円のうち5億5000万円は投資会社などから借り入れ、株の95%はこの会社などに担保として差し入れられていた。
他に保有していた春日電機株以外の複数の銘柄の株も、いずれも担保に設定され売却できない状態だった。
篠原容疑者は08年6~7月、アインテスラに春日電機の資金5億5000万円を無担保で貸し付けたとして逮捕された。この時期のアインテスラの預金は数十万円しかなかったという。
篠原容疑者は逮捕前の毎日新聞の取材に「(アインテスラが)保有する株を売れば返済は可能だった」と説明していた。しかし、保有株を売却するには担保権を外す必要があった。
捜査2課は株取引で損失を抱えていたアインテスラに担保権を外す資金力はなかったとみており、実際に08年11月に担保権が行使された。
春日電機株の多くを失った篠原容疑者は同12月、春日電機の社長を退任した。【川崎桂吾、前谷宏】
毎日新聞 2011年1月14日 東京朝刊
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2011/01/14
約5億5000万円の貸し付けを受けたマーケティング会社「アインテスラ」(東京都中央区)の返済原資とされていた保有株の大半は借金の担保に差し入れられていた
春日電機特別背任:貸付先、返済能力なし 保有株大半が担保