毎日新聞
テロ資料流出:公安情報出版 個人情報削除せず
国際テロに関する警視庁公安部外事3課などの内部資料とみられる文書がインターネット上に流出した問題で、流出データを収録した本が出版されたことが分かった。捜査協力者や警察官の氏名や住所、顔写真などの個人情報がそのまま掲載されており、出版元の第三書館は「被害者はテロリストとして扱われた捜査協力者。誰が被害者なのかを明らかにする必要があると判断した」と説明している。
本のタイトルは「流出『公安テロ情報』全データ」(480ページ)。流出したデータを項目ごとに分け、内容を加工せずに転載している。「個人情報が含まれている」として配本を断る書店もあったが、既に約2000部が全国の店頭に並んでいるという。
警視庁はデータについて、「調査中」として内部資料とは認めていない。第三書館の北川明社長は「警察が内部資料と認めていない以上、出版する権利はある。警察の情報管理のずさんさやイスラム教徒を敵視する姿勢を浮き彫りにしたかった」と話している。
毎日新聞 2010年11月27日 10時40分
朝日新聞 2010年11月27日3時45分
流出「公安テロ情報」出版 第三書館、実名や顔写真掲載
警視庁などの内部資料とみられる国際テロ関係の情報がネット上に流出した問題で、流出データを収録した本が出版された。警察官や捜査協力者の住所や氏名、顔写真などがそのまま掲載されている。出版した第三書館(東京都新宿区)は「警察の情報管理のルーズさを問題提起したかった」としている。
タイトルは「流出『公安テロ情報』全データ」(469ページ)で、25日発行。データは編集部が作成した項目に整理されているが「内容には手を加えてはいない」という。
第三書館によると、書籍取り次ぎ大手には「個人情報が含まれている」として書店への配本を拒まれたが、一部書店からは直接注文が入っているという。ネットでは購入できるサイトもある。
第三書館の北川明社長は、「流出により日本の情報機関の信用が失墜した。イスラムを敵視する当局の姿勢も浮き彫りになった」と説明。個人情報を掲載する是非や著作権については「すでに流出しているデータである以上、出版の重要性が勝る。警察は自らの情報と認めておらず、我々には流出情報として出版する権利がある」としている。
実名や顔写真などを掲載された都内のチュニジア人男性は「情報を漏らした警察よりもひどい。書店で売られたら生きていけない」と話した。
専門家によると、警察の文書であっても創作性があれば著作権が認められるが、情報提供者の名前を抜き出したメモや捜査の人員配置を記した計画書など事実を列挙した文書であれば、創作性がないと判断され、著作権は認められない可能性が高いという。
警視庁は流出発覚から約1カ月が経過した現在も「内部資料かどうか調査中」として、内部資料とは認めていない。ある警察幹部は「書籍になればより多くの人の目に触れることになり影響は大きい。情報流出の原因を突き止めるしかない」と話した。
http://www.asahi.com/national/update/1126/TKY201011260556.html