2011年10月17日13時52分
仙台市の奥山恵美子市長は17日、ジャイアントパンダをつがいで貸し出してほしいと中国政府に求めていることを記者団に明らかにした。東日本大震災で被災した子どもたちを癒やそうと、八木山動物公園(同市太白区)での飼育を要望している。
奥山市長によると、中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相が5月、宮城、福島両県の被災地を訪れた際、温首相からパンダのぬいぐるみを贈られた子どもたちの喜ぶ姿を見て、借り受けの検討を始めたという。8月に、中国首脳とパイプを持つ自民党の加藤紘一元幹事長に協力を求め、9月には中国大使館を自ら訪れ、直接要請した。
奥山市長は「お金を出してのレンタルは難しい」と述べ、無償貸与の希望を伝えている。2000年7月に阪神大震災で被災した神戸市の市立王子動物園に2頭が貸し出された際には、神戸市は中国側に年100万ドルを支払っていた。
政府、パンダ貸与の要請検討 中国に、仙台の動物園依頼
日本政府が中国に対し東日本大震災被災地の動物園へのジャイアントパンダ貸し出し要請を検討していることが16日、分かった。仙台市の動物園が震災で傷ついた子どもたちを癒やしたいと中国側との交渉を開始、日本政府にも後押しを依頼した。複数の政府関係者が明らかにした。
日中両政府は国交正常化40周年となる来年に向け、両国の友好を演出したい意向だが、昨年の中国漁船衝突事件などで関係はぎくしゃくしたまま。このため日本政府は中国側の出方を探った上で、12月に訪中する見通しの野田佳彦首相と胡錦濤国家主席との会談で取り上げ、進展を図りたい考えだ。
時代遅れのパンダ外交 対中感情改善は効果薄
2011/02/23 08:43更新
□仙女(シィエンニュ)・比力(ビーリー) 上野動物園での映像公開
■「友好の使者」40年前とは一変
2月21日に中国から東京の上野動物園に到着したジャイアントパンダ2頭の映像が22日、公開された。東京都によると、メスの「仙女(シィエンニュ)」はすぐに新しい住まいにもなじみ、ぐっすりと眠り込んだが、オスの「比力(ビーリー)」は興奮しているのか、終始落ち着かない様子で神経質そうに室内を歩き回っていたという。
2頭は3月下旬にも一般公開され、東京都は公募していた日本名を公開に合わせて発表するなどお祭りムードが盛り上がる。中国政府も2頭を“友好の使者”と位置付け、尖閣(せんかく)諸島沖の中国漁船衝突事件などで悪化した日本国内の対中感情の改善に期待するが、パンダ人気に沸いた日中国交正常化当時と現在では日中を取り巻く状況は激変しており「パンダ外交は時代遅れ」との冷めた見方が広がっている。
■ギョーザや漁船衝突事件
「当時のパンダ人気はすごかった。日本でパンダが大事にされていることに、中国の人々も喜んでいた」
1972年9月に日中国交正常化が実現したが、日本で巻き起こった中国ブームの本当の火付け役は、翌10月に上野動物園にやってきたカンカンとランランだった。日本パンダ保護協会の名誉会長を務める女優、黒柳徹子さん(77)は当時の過熱ぶりをこう振り返る。
しかしあれから約40年。中国製ギョーザによる中毒事件や中国海軍の活動活発化などに加え、昨年9月の漁船衝突事件で日本の対中感情は最低レベルに墜(お)ちた。日中関係筋は「日本国内で中国への見方は厳しくなるばかり。大きな効果は見込めない」と分析する。
実際、内閣府が衝突事件直後の昨年10月に実施した世論調査でも、中国に「親しみを感じない」との回答は77.8%で1978年の調査開始以来、過去最高を記録。「親しみを感じる」も20%で最低だった。
■レンタル料「結構高い」
さらに日本では、この大不況下に、野生動物保護への協力資金名目で中国に年間95万ドル(約7900万円)もの高額の“パンダレンタル料”を10年にわたり支払うことに反発がある。
中国は90年代から“パンダレンタル料”を各国から受け取る方式を採用しているが、「高額だ」との批判も根強い。英国では1月、李克強(り・こくきょう)副首相(55)が訪英時に発表した英エディンバラ動物園への貸し出しに動物愛護団体から反発が出た。前原誠司外相(48)もパンダ来日に期待感を示すものの、費用は「結構高い」とこぼす。
■「手詰まり感」指摘も
中国パンダ保護研究センターは2頭を送り出すに当たり「娘を嫁に出すような気持ちだが、中日友好の使者になってくれるのは誇りだ」と語り、中国中央テレビも21日正午のニュースで、2頭の搬送の様子や歓迎ムードに沸く上野動物園周辺の模様を詳細に報じるなど、パンダ外交に期待する。
しかし、その神通力はかなり薄れている。日本駐在の中国紙記者は「パンダ頼みには双方の手詰まり感を感じる」と指摘している。
(SANKEI EXPRESS)
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■パンダ外交 相手国との良好な関係の構築・維持を目的に、パンダを贈る中国の外交手法。蒋介石(しょう・かいせき、1948~75年)の国民政府が1941年、米国に贈ったほか、中華人民共和国も50年代からソ連、北朝鮮に「友情の証し」として贈呈。72年のニクソン訪中や日中国交正常化に際しても贈られた。しかしパンダを政治利用していると国際的批判が高まり、90年代からは中国の野生動物保護への協力資金名目でレンタル料を取って数年間貸し出すやり方に変更。中国側資料によると、米国やドイツ、メキシコなどに約30頭を貸し出している。
神戸市動物園のパンダ急死、中国とのパンダ外交を見直すべき?
2010年10月4日 09時08分
神戸市の王子動物園が中国から貸借していた雄パンダ・興興の急死は、精液採取に伴う麻酔中の嘔吐(おうと)による窒息死らしく、普通に考えれば動物園側の言い訳できない医療ミスである。神戸市は50万ドルの賠償金を中国側に支払うことになりそうだ。50万ドルとは、パンダ一年のレンタル料と同額だ。これを高すぎると思う人もいるかもしれないが、協議書でそう決めているのだから、早急に支払うのは当然だろう。
しかし、この件は賠償金を支払って、それで終わりではない。改めて考えねばならないのは「パンダ外交」の妥当性だ。
日本のパンダ急死のニュースは、中国でもそれなりに報じられた。興興の死は9月9日、尖閣諸島海域で発生した中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突の2日後で、ネット上ではほんの一部でだが「日本がパンダを仕返しに殺したのか?」といった言説も飛び出した。
さすがに、それについては、「証拠もないのに決めつけるな」といさめる声もあるが、死亡原因が死亡原因だけに、中国のパンダファンには大切な国宝を死なせられたことへの悲しみと憤りはある。そして日本人としては、改めてレンタル料や賠償金の高さを思い知らされ、国宝級の動物を借り受けることの責任の重さに気付いただろう。一つ間違えば外交関係にも悪影響をもたらすのだ。
中国では希少動物を政治の道具にしてきた中国のやり方を見直すべきだ、という声も大きくなっている。とある掲示板でこう書き込みがあった。「中国は数十年前のように貧しい国ではないのだから、パンダに出稼ぎさせて、その研究費を維持する必要があるのか、パンダは故郷で暮らすのが一番いい」
つがいで年間100万ドルの貸与が中国にとって本当は研究目的以上に、外交的政治的目的であり外貨稼ぎであること、貸与される国にとっては動物園の目玉アイドルが欲しいという商業目的であることは、誰の目にも明らかだ。本当に繁殖研究のためなら、異国の動物園のようなストレスのある場所ではなく、生息地に研究者を派遣する法がよっぽど効果的で安上がりなのだ。
今後、神戸市はメスパンダ・旦旦をどうするか、ということを考えなければならない。旦旦と興興の貸与期間は今年6月に5年延長することで合意していたが、繁殖計画なら死亡した興興の代わりに雄パンダを借り受けなければならない。しかし、その意義は本当にあるのだろうか。いっそこれで契約を白紙にもどして旦旦をふるさとに返してやってはどうか。…