東日本大震災の余震を受け、経済産業省原子力安全・保安院は8日、東北電力の東通原発(青森県東通村)、女川原発(宮城県女川町、石巻市)で使用済み燃料プールの冷却機能が地震発生後、20分~1時間20分にわたって喪失したことを確認した。その後冷却機能は回復し、プールの水温上昇もほとんどみられなかった。
女川原発では1~3号機の原子炉建屋にある使用済み燃料プールやほかの建屋で計8カ所、少量の水漏れを確認した。漏れた水の量は1カ所あたり最大で3・8リットル、水に含まれた放射性物質が最も多かったのは1号機原子炉建屋の燃料プール脇の床で5410ベクレルだった。揺れでプールの水があふれたとみられる。
東京電力によると、福島第1、第2原発に新たに大きな問題は確認されていない。福島第1原発1号機の原子炉内の温度が地震前の7日午後7時に約223度だったのが、地震後の8日午前0時は約260度まで上がった。保安院は「不連続的な上昇を示しているため地震の影響とみられるが、注視していく」としている。炉内の温度は8日午前6時には約250度に下がっている。
同原発の作業員も全員無事。1~3号機の原子炉を冷やすための注水や、水素爆発を防ぐための1号機の窒素注入作業にも影響はなかった。
東通原発と日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(同県六ケ所村)で外部電源が一時途絶え非常用発電機に切り替わったが、ともに外部電源が復旧した。
各施設の放射線モニタリング数値に変化はなく、放射性物質が外部に漏れたとの情報はない。
女川原発は4系統で受電していた外部電源が地震直後、1系統だけになったが8日午前中に2系統が使える状態になった。
北海道電力泊原発1、2号機は、東北地方への送電ができなくなったため、出力を90%に落として運転したが、8日午前、定格出力に復旧した。
停止中の茨城県の日本原子力発電東海第2原発に異常はない。
2011/04/08 13:59 【共同通信】
東通原発、非常用発電機全て使えず 女川も1台故障
2011年4月8日23時29分
7日深夜に起きた余震では、東北地方の複数の原子力施設で外部電源からの電力供給が途絶した。このうち東北電力東通原発や女川原発では、バックアップ用の非常用ディーゼル発電機が使えないなど、危うい状態が続いたままだ。今回は辛うじて難を免れたが、今後も予想される大規模な余震の揺れと津波に、原発は耐えられるのか。
東北電力によると、東通原発(青森県東通村)1号機は、余震で外部からの電力供給が2系統とも遮断されたため、非常用ディーゼル発電機による冷却に切り替えた。
8日午前3時半、外部電源が復旧。外部電源とともに非常用発電機による電力供給も続けたところ、午後2時10分ごろ、発電機の燃料循環ポンプ付近で燃料の軽油がもれているのを作業員が見つけ、運転を止めた。燃料漏れの理由は調査中。
同原発は3月11日の東日本大震災時には定期検査中で、原子炉に燃料棒はなく、現在、外部電源で使用済み核燃料貯蔵プールの冷却を続けている。非常用ディーゼル発電機は3台あるが、もう2台も、点検中のためすぐには起動できないという。
女川原発(宮城県石巻市、女川町)1号機でも、非常用ディーゼル発電機2台のうち1台が壊れたまま、1週間にわたって必要な機能を果たせない状態にあることがわかった。経済産業省原子力安全・保安院が8日、明らかにした。
保安院によると、同電力が今月1日、1号機の発電機の定期点検をしたところ、2台のうち1台が発電所内の電源にうまく接続できないことが分かった。
東北電力は接続不良の原因をつきとめて8日、原子炉等規制法に基づいて保安院に報告したが、この間、新たな発電機の配備はないという。
女川原発はこの状態のまま7日の余震にあい、外部電源3系統のうち2系統が途絶。1系統は生き残ったが、一時は綱渡りの運転を余儀なくされた。
東通、女川の両原発で、この状態が続いたまま再び外部電源が失われた場合、どう対処するのか。東北電力は保安院などに対し、福島第一原発の事故を受けて配備した電源車で最低限の冷却はできる、などと説明しているという。
女川原発ではまた、地震の揺れの影響で、各号機の使用済み核燃料貯蔵プールの冷却装置が自動停止した。容器の振動で水が波打つように大きく揺れる「スロッシング」という現象が起き、ポンプに負荷がかかってモーターが停止したという。
約1時間後に再起動したが、放射性物質を微量に含むプールの水が約3.8リットルあふれ、専用のナプキンで拭いた。周囲の放射線の値に変化はないという。
日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)でも、外部電源が途絶え、非常用ディーゼル発電機で使用済み燃料貯蔵プールの冷却を続けたが、8日午後3時ごろ外部電源が復旧した。