メセナ存続 管財人「まず本業の利益」
会社更生手続きの開始決定を受けた林原が7日に岡山市北区の本社で開いた記者会見で、福田恵温(しげはる)社長は「これから本格的な再生に入ります。一生懸命取り組みたい」と覚悟を示した。一方、外部調査委員会も同日設置され、長年にわたり不正経理を続けていた旧経営陣への責任追及も始まる。今後本格化するスポンサー選びの中で、美術館などメセナ事業の存続や、JR岡山駅前の土地の売却先も焦点として浮上しそうだ。(田村勇雄、竹上史朗)
会見で、福田社長は終始明るい表情で、トレハロースなど主力製品の製造、販売の順調さを強調。「研究開発型企業の意気込みを示す新製品を早期に発表したい」との発言も飛び出した。
管財人の松嶋英機弁護士らは、更生手続きの流れを説明。再生を支援するスポンサー企業の選定作業については、4月上旬まで企業を募った後、各企業が提案した支援内容を精査し、7月をめどに絞り込む方針。並行して、金融機関からの債権の届け出と債権額の確定を経て、債権者への資産の分配を盛り込んだ更生計画案を作成する。
会見では、元検事や元裁判官ら3人からなる外部調査委員会を設置したことも発表。管財人らは、調査項目として配当などによる旧経営陣へ資金の流れの違法性や、虚偽の税務申告による会社への損害の解明などを挙げ、「調査委員会の設置は、金融機関側のニーズが高かった」と説明。捜査機関への告発については、「やるとすれば、被害を受けた金融機関や管財人になる」とした。
一方、美術館や霊長類研究などメセナ事業について、福田社長は「成果は高く、閉鎖はもったいない」と存続を強く希望した。松嶋管財人も「確かに素晴らしい事業だが、本業の利益がないと継続できない。行政やスポンサー、債権者と相談し、良い方法で解決したい」とした。
また、林原が所有する岡山駅前の約4万5000平方メートルの駐車場について松嶋管財人は「(地元政財界から、切り売りせず)公共に役立つ活用方法をという要望があるが、なるべく高く売って(債権者の)銀行へ支払う義務もある。土地が欲しいという人には、要望を伝えている」と説明した。
(2011年3月8日 読売新聞)
林原の更生計画、年内認可めざす 手続き開始決定
2011/3/8 5:59
東京地裁が7日、会社更生法の適用を申請していたバイオ企業の林原(岡山市)の更生手続き開始を決定した。同日会見した更生管財人の松嶋英機弁護士は、スポンサーの打診が相次いでいることを明らかにしたうえで7月をメドにスポンサーを選定し、年内の更生計画認可を目指す考えを示した。またJR岡山駅前の社有地などの不動産についてはスポンサーとは別に売却先を探す可能性を示唆した。
更生管財人は今後、会社の資産と負債の全容を明らかにしたうえで、債務の弁済計画などの更生計画案を作成し、11月18日までに同地裁に提出する。同時にスポンサーとなる企業を選定する。
松嶋弁護士は「スポンサーになりたいという打診は70~80社からある」と説明。林原の本業に近い食品や医薬品などのメーカーだけでなく、異業種の企業、投資ファンドなども名乗りを上げており、海外企業からの打診もあるという。
林原は美術館などのメセナ事業にも力を入れてきたが、「こうした利益を生まない部分も含めて一括して引き受けてもらうのが第1希望」と述べた。ただ更生手続きでは債務の弁済が優先されるため、メセナを引き取ることをスポンサー選びの条件にはしないという。
林原がJR岡山駅前に保有する5万平方メートルの社有地の扱いについて松嶋弁護士は「スポンサー企業に引き取ってもらうのがいいのかは議論がある。スポンサーに引き受けてもらわなくても(他の企業に)売れるだろう」と述べ、不動産は別途売却して債務弁済の原資に回す可能性を示唆した。
会見に同席した福田恵温社長は現在の経営状況について「製品の製造・販売は通常に戻り、安心している。今後、新製品も発表していきたい」と語った。